最近、「深刻化する高卒フリーター」というテーマのドキュメンタリー番組を見た。とくに地方の公立高校では卒業後にフリーターの道を選ぶ生徒が増えているそうで、生徒にその理由を聞いてみると多くが「やりたい仕事がとくにないから」ということらしい。
その気持ち、めちゃくちゃ分かる。自分もそうだった。
私は大卒だが、いざ就職活動をするときに全く同じ悩みを抱えていた。
大学3年になっていきなり就職先を考えろとなって、やりたい仕事とかなりたい職業とか、そんなものは特にない。強いていえば「何かを作って世に届けて感動されるような仕事ならやりがいありそうだなぁ」くらいの小学生並みの考えだ。
要するに、
- イラストレーター
- 漫画家・作家
- 映画監督
- 何かのデザイナー・クリエイター
とか、真面目にいえば「現実を見ろバカ」と言われそうな夢見がちな仕事ばかりだった。ガキ丸出しだ。自分に特別な才能がないのも分かっていたし、どうせなれっこないのも分かっていた。
それでも、全く興味ない仕事に就職して平凡なサラリーマンになるか、到底可能性は低いけどフリーターで食いつなぎながら夢=やりたいことを探して「好きなことで食っていく」を目指すか、割と死ぬほど悩んだ。
……その後、結局私は普通に就活してそれなりの企業に入って平凡な正社員になった。
あれから社会人を10年くらい経験して「大人」になったいま振り返ると、フリーターを選ばず正社員になっておいて良かったと確信的に思っている。
目的もなく漠然とフリーターになってしまうと、その先は破滅の道になる可能性が高い。
その理由をいくつか書いていく。
フリーターになっても「やりたい仕事」や「なりたい職業」は結局見つからない
大学のとき、私と一緒に就職に悩んでいた友人が3人いた。全員コレといった「夢」や「目標」があるわけではなく、何となく「就職することにリアリティがない。想像できない」という理由で就職から”ただ逃げていた”タイプだ。
私は結局就職したが、3人は就職活動をES(エントリーシート)で挫折して見事に大卒フリーターになった。
……で、その後どうなったかというと、2人は数年フリーターを続けたうちに「やっぱこのままじゃヤバい」となり20代後半で何とか零細企業の正社員にありついた。残り1人は30歳を超えた今でも日雇い派遣や契約社員など非正規職を転々としている。
誰一人として、フリーターになったあと「やりたいこと」を見つけて本気で目指した人はいなかった。
卒業後はみんなグダグダだった。結局そんなものだ。
ある時期は「作家になろうかぁ」と思い立ってはチョロっと小説を書いてすぐにやめ、ある時期は「やっぱCGクリエイター目指すわ」と思い立って高額なソフトを買ったもののすぐにやめ、果ては「プログラミング覚えてアプリ作って起業するわ」とか言い出したもののすぐに挫折してやめ、
何一つ続かない。
こうしてフラフラし続けることで、逃げ癖(辞め癖)がついてしまうのもフリーターの典型的な特徴だ。
「とりあえず1年間バイトで貯金して海外を放浪してくるわ」と言っていた友人もいたが、結局行かなかった。
そうやって気まぐれと挫折を繰り返しながら、結局ずーーーっと居酒屋やCDショップのアルバイトをしてるだけで大事な20代が過ぎていく……。これがフリーターになった人たちの現実だった。
結局フリーターになったところで「やりたいこと」なんて見つからない。だって本当にやりたいことがある人は、”もうすでにやっている”からだ。
関連仕事が続かない。逃げ癖・辞め癖を治したい人向けのタイプ別の治し方
フリーターに厳しい社会の現実
大学生の頃の私がそうだったので自信を持って言えるが、「なりたい職業がないからフリーターでいいか」と考える人は、フリーターの行き着く先がどれだけ悲惨か分かっていない。もしくは、考えがかなり甘い。というか、社会のことが分かっていない。
要するに、何も知らない子供だ。
フリーターというのは、一度なってしまうとどんどん這い上がるのが難しくなる蟻地獄のような側面がある。フリーターの道を選ぶならその先の現実がかなり厳しいことを覚悟しておいた方がいい。
正社員の就職が厳しい
日本の雇用というのは不可逆だ。正社員はいつでも簡単に独立したりフリーターになることはできるが、その逆は非常に難しい。それでも20代フリーターであればまだ正社員の門は開いているが、30代を超えると正社員は絶望的に難しくなる。
既卒フリーターになった私の友人2人は27,8歳ごろに正社員就職を始めたが、求人サイトで履歴書を送りまくってもほぼ書類落ち。ハローワークに行っても紹介されるのはブラック低賃金ばかりと嘆いていた。
最終的には転職エージェントに相談し、エージェントのバックアップのもと何とか納得できるレベルの零細企業に滑り込むことができたが、学歴からして新卒切符で就職していたら一部上場企業だっていけたかもしれないと思うと失ったものは大きいと思う。
ちなみに、30代で未だにフリーターや契約社員を転々としている友人はもう正社員はかなり厳しくなっている。フリーター向け転職エージェントも「29歳以下が対象」がほとんどで、30代になるとバックアップしてもらえない。つまり、転職支援のプロをもってしても30代フリーターは厳しいので受け付けませんということだ。
繰り返すが、フリーター人生の厳しさは30歳以降からが”本番”である。そのことは下記記事に詳しく書いた。
フリーター(とくに男性)は結婚も難しい
とくに男性フリーターの場合は結婚も難しい。
当たり前だが女性は結婚相手に経済力をかなり求めており、市場調査では女性が結婚相手に求める年収は回答率1位が500万円。フリーターならまず不可能な年収だ。
さらに、「好きな男性がフリーターだったらどうしますか?」という女性向け市場アンケートでは、
- 思い続ける……16.3%
- ほかの良さそうな男性を探す……83.7%
という残酷な結果が出ている。女性にとって恋人と結婚相手は全く別物だそうで。
なかには「俺(私)は結婚しなくていいもんね」という人もいるだろう。生涯独身、贅沢せずひとりで自由に生きていくならフリーターで十分と思っているかもしれない。
だが残念ながら、フリーターの生涯賃金では老後まで一人で生きていくことも難しいのだ。
一生フリーターの老後は生活保護の可能性も高くなる
正社員とフリーターで生涯賃金(一生で稼ぐお金)にどれほど差があるかご存知だろうか?
生涯賃金の差
- 正社員(全体):約2億円弱
- 大卒正社員:約2億5000万
- 社員1000人以上の大企業正社員:約3億円強
- フリーター:約6000〜8000万円弱
フリーターの生涯賃金は正社員の約3分の1以下。人生3回分以上の絶望的な差がある。
それでも、独り身で贅沢をせずに食って行くだけなら、60歳くらいまではバイトで月15万稼ぎ続ければ生きていけるだろう。
問題は、身体もガタがきてバイトが厳しくなってくる老後になってからだ。
一般的に老後貯金は3000万必要とされているが、平均年収200万円以下で退職金すら出ないフリーターが3000万の貯金を作るのはほぼ不可能である。
年金に頼ろうにも、国民年金(フリーターや自営業の年金)の支払い実績は月5万弱ほどしかない。
生涯独身で一人暮らしだとしても月15万は必要として、年金が月5万しか貰えないと残り10万はバイトで稼ぐしかない。しかし現実的に、60歳を超えてから死ぬまで月10万をバイトで稼ぎ続けるなど不可能に近い。病気や怪我になれば一発で終了だ。
となると、老後を生きるには生活保護に賭けるしかない。
以前にNHKスペシャルで「老後破産の現実」が放送されていたが、独り暮らしの高齢者は全国600万人に及び、その半数300万人が生活保護水準以下の年金収入しかないそうだ。しかし、そのうち実際に生活保護を受けている人は70万人に留まるという。
年金収入が月10万円未満でも生活保護が通らないという高齢女性。生活保護が受給できるハードルは厳しいのである。
こうして貧困に陥った高齢者は満足な医療や介護も受けられず、孤独死する高齢者も増えているそうだ。フリーターから這い上がれなかった人は、かなり過酷な老後を迎える可能性が高い。
なりたい職業を見つけるのは、正社員になってからでいい
探すなら正社員の身分があった方が可能性が広がる
フリーターという生き方を完全否定するつもりはないが、ここで言いたいのは、
フリーターで生きて行くのは現実的に厳しく、「やりたいことがないからフリーター」という選択肢にはメリットが一つもない
ということである。
それなら、とりあえず正社員になっておいた方が絶対にいい。可能性の問題だ。
フリーターから目指せる可能性の幅より、正社員から目指せる可能性の幅の方が圧倒的に広いからだ。
日本の雇用制度は不可逆だ。正社員からフリーターになることはできても、フリーターから正社員になることは非常に難しい。目指せる選択肢の幅がまったく違う。
例えば、なんとなく「映画関係の仕事をしたい」という願望があるとしよう。
最初は映画監督・脚本家・映像クリエイターなどに憧れる。そこでフリーターから独学でプロの道を目指そうとした。しかし99%は途中で挫折するだろう。
そんな時に「クリエイターはダメでも、映画の広報やプロモーション、マーケティングなど映画関係の仕事がやりたい」とあなたは思うようになる。
それらの仕事は、東宝のような映画会社の社員の仕事だ。そこに職歴なしのフリーターが採用される可能性はゼロに近い。「フリーター」というだけで書類落ちだ。
しかし、正社員であれば映画会社に転職できる可能性は残っている。
たとえ1度の転職では無理でも、まずマーケティング会社に転職してマーケティングスキルを積み、それを活かした2度目の転職で映画会社を試みるなどいくらでも道もある。
会社員から漫画家になった人は多数いるが、漫画家を目指していたフリーターが出版社の編集者になれるケースは非常に少ない。フリーター → 正社員の間には社会的な壁があるからだ。
このように、フリーターよりも正社員の方が可能性として幅広い職業に転身しやすい。
「好きな仕事をして生きたい」という価値観はわかる。それなら、ひとまず正社員になってから「なりたい職業」を探す方が賢い。
20代そこそこで最初に入った会社・職業が人生の仕事になることなんてほとんどないのだ。長い人生なのだから道中ゆっくり探せばいい。
関連フリーターを脱出したい!今踏み出せる具体的な脱出方法3つ
正社員になりたいなら1年でも早く、20代のうちに!
フリーターから正社員になるのは難しいと書いたが、20代のうちならまだ全然余裕で正社員に就職できる。しかし20代後半になると1歳増えるごとにどんどん可能性は狭まり、30歳になると段違いでハードルが上がるので、動くなら20代のうちの1年でも早い方がいい。
そして、ハローワークには頼らないこと。ハローワークはブラック求人と空求人の温床だし、相談員のおじさんもただの期間契約職員なので転職に関してはド素人だ。
参考ハローワークはブラック?フリーターの就活は転職エージェントに行くべき理由
フリーターの正社員就職では必ず、”フリーター就職に特化した”転職エージェントを使うこと。
一般的な転職エージェントとは違い、フリーターや大学中退者の就職を専門としているエージェントというのがある。
エージェントは無料で使えるので不安なことや希望はなんでも聞けばいい。
公式HP
ハタラクティブ
20代フリーター向け就職支援サービスとして最大手の「
ハタラクティブ
「20代ならまだ余裕」といったのは、フリーター特化の転職エージェントが「29歳以下」を対象にしているからだ。30代はおよそどこでも対象外になるのでエージェントが使えなくなる。つまり「詰み」だ。
とにもかくにも、漠然とフリーターを続けてしまうともう人生這い上がれなくなるケースが多い。「なんとなくフリーター」という期間は1年でも1ヶ月でも早く脱出した方がいいだろう。
20代フリーターが利用すべき転職サイト
- 社会人経験なし・未経験に強い「ハタラクティブ
」 - リクルートグループ運営の「就職Shop」
- 39歳以下まで利用できる「JAIC(ジェイック)
」 - 国内最大の転職サイト「リクナビNEXT」
(既卒フリーターの就職は下記記事も参考に)
もしやりたい仕事を見つけたら、趣味や副業から小さく始めてみる
やりたい仕事は正社員になってから探すとして、見つけた仕事が作家やクリエイター系などフリーが多いプロフェッショナル職というのが、あるあるだ。誰もが一度はクリエイターに憧れるものである。
そうした仕事に夢を見つけた場合は、まず趣味(副業)から始めることを全力でおすすめする。
仕事終わりや土日に作品を作り、ブログやSNSやYouTubeに発表の場を作ってどんどんアップしていこう。もしあなたにプロになれる力がつけば必ず反応が返ってくるはずだ。
今はネット全盛期なのでコツコツ作品を出していくことで仕事の依頼が来るなんてザラである。そこまでくれば「副業」としてスタートだ。
ただし、ちょっと仕事が来るようになったからといって調子に乗って正社員を辞めると死ぬ。もしそれ1本で食っていけるくらい稼げるようになれば晴れて独立すればいい。おめでとう。
これを聞いた時点でもしあなたの中に、
- 会社帰りや土日で作品を作る時間なんてない
- 作品をブログやSNSで発表するのは恥ずかしい・めんどい
- なんか大変そうで続かない気がする
といった悩みが1ミリでも生まれるようなら、それは「やりたい仕事」ではない。100%プロにはなれないので潔く諦めよう。
本当にプロになる作家は「作品を作る時間がない」なんて言わない。時間がないなら寝る時間を削って作りまくるような人間がプロになる世界だし、それほどアツく夢中になれる仕事が「やりたい仕事」のはずだ。
関連記事一度人生のレールを外れた人ほど今すぐ副業をすべき理由
【最後に】「やりたい仕事」をしている人なんて少ない。それでも幸せな人は沢山いる
最後に言っておきたいことを、まとめておく。
世の中、なりたい職業(夢)があった人なんて少ないし、なりたい職業(夢)になれた人なんてもっとレアだ。世の中のほとんどのサラリーマンは仕事に夢を見ずに「生活するための仕事」として現実的に働いている。
「好きでもない仕事をする人生が楽しいかよ」
と社会人童貞の人は思うかもしれないが、これが意外とそうでもない。
私も学生の頃は、仕事の幸せというと「好きな仕事をして、業界で有名になって、大金を稼ぐ」みたいな超ビッグドリームのことばかり思い浮かべていたが、この発想がまず「子供」だ。人はもっと小さな幸せや達成感でも幸福や楽しみを感じることができる。
たとえ仕事内容自体にそれほど興味がなくても、
- けっこう給料がいい
- 仕事をこなして出世レースに勝つのが快感
- 一つ一つできること(スキル)が増えるのが楽しい
- 人間関係が明るくみんなで仕事する感じが楽しい
- 自分の仕事でお客から感謝されるのがちょっと嬉しい
- 自分の仕事が世の中に影響を与えていると思うと満足感がある
などなど、小さい満足感や達成感を感じるたびに「まぁ今の仕事も悪くないな」と思えるようにものだ。決して「やりたい仕事じゃないから不幸」とはならない。
むしろみんなそうやって大なり小なり置かれた場所で楽しみを見出しているし、あるいは仕事は生活費を稼ぐためと割り切って、趣味で生きがいや幸せを味わっている人もいる。
つまり、やりたい仕事が特にないからといって、人生単位で幸せになることは十分可能なので安心しよう。
「興味とかどうでもいいから、”金を稼げる仕事”をしろ」
90%の人間はお金を稼げるようになると仕事も楽しくなります。なりたい職業がない人は「稼げる職業」に就いとけ、稼げば稼ぐほど楽しくなるから。というのは私からのアドバイス。
お金のパワーは偉大である。たやすく人生を変える。
詳しくは下記記事に書いたので、興味があればぜひ読んでみてください。