決算日の数日前くらいから、なぜか突然下げはじめる株がよくあります。
場合によっては、好決算が出ることが予想されているのに何故か決算前に下げ始めて、ポジションを持ち越そうとしていた人にとっては「なんで!?」となりますよね。
なにか悪材料が裏で漏れているのかも……?と変に勘繰って、怖くなって売却したら嘲笑うかのように決算後に上がったりして、見事に「ふるい落とし」にハマった経験が私も何度かあります。
株をそれなりに経験している人ならご存知だと思いますが、
「決算前に下がってくる」というのは株の”あるある”です。
なぜ決算前になると株が下がりはじめるのか? いくつか考えられる理由を挙げていきます。
その理由を知っておけば、不必要に不安になって狼狽売りをしてしまうことも減るかもしれません。
決算前に株が下がりはじめる理由
決算前に株が下がりはじめる理由として多いのが以下の通りです。
- 決算ギャンブル回避の売り(ポジション解消売り)
- 決算後の上げを仕掛けるための大口のふるい落とし
- 他要因のバスケット売り
それぞれ説明します。
1. 決算ギャンブル回避の売り(ポジション解消売り)
好決算なら上がり、クソ決算なら下がる……と、そんな簡単にはいかないのが株の難しいところ。
好決算なのにめちゃくちゃ下がったり、反対にクソ決算なのに悪材料出尽くしで上がることも多々あります。
今回の決算は良さそう or 悪そうは事前にある程度判断できますが、だから株価がどっちに動くか? はわりとギャンブルになります。
だからポジションを持った状態で決算を跨ぐことを「決算ギャンブル」なんて言われたりします。
慎重派の投資家やトレーダーは、決算ギャンブルを回避するために決算前に対策を取ります。
例えば、長期目線の現物株を保有している投資家であれば、決算前に信用取引で保有中の現物株と同等の空売りをすることで、上がっても下がっても評価額が変動しない状態にします(いわゆるヘッジです)。
短期〜スイングのトレーダーであれば、決算ギャンブルを回避するために決算前にはポジションを閉じようとします。買いで入っていれば売り決済で解消し、売りで入っていれば買い決済で解消します。
株は基本的にロング(買い)の方が多い性質があるので、決算前に大量のポジション解消が入ると必然的に売り決済が多くなるので、売り圧力が強まって株価が下がっていきます。
とくに、決算日に向けて信用買い残高が増えてきている銘柄は、それだけ決算に向けた信用買いのイナゴトレーダーが群がっている状態なので、彼らが決算前にポジ解消しはじめると大きな売り圧力になります。
時価総額の小さい銘柄ほどイナゴが集まりやすく、また簡単にイナゴタワーが崩れます。
SNSで話題になっていたり、個人投資家が群がっていそうな銘柄、さらに決算に向けて信用取引の残高の増え続けていた注意しておいた方がいいかもしれません。
2. 決算後の上げを仕掛けるためのふるい落とし
「高く飛ぶためには一度しゃがまないといけない」とは言いますが、それにはちゃんと理屈があります。
もし大口が決算後に株価を爆上げさせようと仕掛けたい場合、すでにその株に「買い」の投資家が多く群がっていると不都合です。
なぜなら、買いの投資家は株価が上がると利確するために「売る」ので、買いの投資家の数というのは将来の売り圧力でもあるからです。
これだといざ株価を上げようとしても、少し上がるだけで買いの投資家たちの利確売りがのしかかってくるので上値が重くなってしまいます。
だから、株価が爆上げする前に、逆に一度株価を下げることで買いの投資家に株を投げ売りさせ、買いの数を減らし、上値を軽くする必要があります。
この上値を軽くするために、上げる前に落とす動きを「ふるい落とし」と呼んだりします。
このふるい落としはあらゆるシーンで起こります。
例えば、超有名な買いパターンである「カップ・ウィズ・ハンドル」があります。
カップの底から株価が上がってきて、カップの淵から一度下がり(=ここがふるい落とし)、再び上昇した「取っ手」の部分で買うというチャートパターンです。
このカップウィズハンドルの形を分解して見ると、
カップの底から這い上がってくる段階で大量の買い方が群がります。このままでは前回高値(カップの淵)を抜いていっても、待ってました!とばかりに買い方の利確売りが大量に降ってくるので上値が重くなり上昇が持続しません。
なので、ここから高値を抜いていく爆上げを起こすには、一度下げて買い方を減らす(上値を軽くする)必要があります。
そして上手いトレーダーほどそのことを熟知しているので、高値更新ではなく、前回高値あたりの価格帯で利確しようとします。
そのため株価は、前回高値を一度で勢いよく更新していくことは少なく、高値付近で一度折れて下がって買い方を減らしてから(ふるい落としてから)、上値が軽くなった二度目のアタックで高値更新していくケースが多いのです。
もう一つ付け加えると、株価を上げる前に一度下げることで「買い」を減らすと同時に、空売りの投資家を誘い込む効果もあります。空売りが溜まれば、株価を挙げた際に空売りの損切り(=買い決済)が買い圧力になるからです。
買い方は将来の売り圧力、売り方は将来の買い圧力になるわけですね。
つまり株価を大きく上げるには、「その前に一度下げて、買い方を減らす/売り方を増やす必要がある」のです。
逆も然りです。株価を暴落させたい場合には、その前に一度挙げて買い方を集め/売り方を減らす必要があります。
なので、決算日に向けて上がっていく/下がっていく……からの決算後に株価が逆噴射して大きく動いた場合は、仕掛け人の大口が上記のような狙いで相場を動かしていた可能性があります。
3. 他要因のバスケット売り
バスケット売り(買い)というのは、例えばファンドなどが特定のセクターやテーマの銘柄をまとめて買ったり売ったりすることです。
セクターごとまとめて売ってる(バスケット=カゴ売り)ので、個別株の事情に関わらず売りが降ってきます。
アルゴリズムによる機械的な売買をしてくるので、同じセクター(=つまり同じバスケットに入れられてる銘柄)はどれも同じ動きをするので判断しやすいです。
一つ実例を紹介します。
ちょうど私が監視銘柄にしていた「青山商事(8219)」です(洋服の青山やスーツカンパニーの紳士服最大手です)。
11月11日が決算日でしたが、その3日ほど前の8日あたりから突然下がり始めているのが分かります。
青山商事はアフコロ銘柄に分類されていて、コロナショックの底から業績は急速に回復中。チャートを見ても株価は長期の底からついに脱し、上昇へと転じ始めた「転換点」です。
今回もほぼ確実に好決算が出ると予想されていた=つまり好決算で上がっていくと思われる銘柄だったので、決算前に物凄い勢いで下がり始めたのは正直予想外でした。
例として出した青山商事(8219)なんかは、結局このパターンだった可能性が高いと思っています。
青山商事はアフコロ銘柄として認識されており、「アフコロ銘柄」としてバスケット売り/買いしているファンドや大口のアルゴリズムによる売買が入ってきます。
青山商事が決算前に不自然に下げ出したのが11月8日。同業のAOKIも同時期に同じように下げ出したので決算回避の売りかと思いましたが、よく見るとアフコロ銘柄が全体的に8日を境に売られていることに気づきました。
例を出すと、アフコロ銘柄の代表格である鉄道株(JR東日本など)を見ても11月8日から下げ始めています。よく考えればなるほど、コロナの第8波が騒がれ始めた時期と一致します。
つまり、青山商事が決算前の8日から売られはじめたというより、
「アフコロ銘柄が8日からバスケット売りされ始めた」といった方が正解。
青山商事は業績回復 & 大幅増配なので「今売る理由が何もない」という状態なのに、決算前にこれだけ機械的な売りが入ってきたのは、やはりアフコロ銘柄のバスケット売りに押された形だと判断しました。
例えば個別株(青山商事単体)を見て売りを判断するのであれば、好決算が出れば一時的に急騰するのは誰でも予想できるので、決算日の翌日に急騰したところまで待って売りをぶつけようと判断するのが普通です。
しかし、ほぼ上昇することが予想できる決算日の前日にも機械的に売りをぶつけてくるのは、青山商事だけを見ているわけではないバスケット売りだと判断できます
このように、ヘッジファンドのような大口は個別株一つ一つではなく、セクターやテーマごとにバスケットにしてまとめ売り/買いしてくるので、個別株の材料をまったく考慮してないような売り圧力や買い圧力が湧き出てくることもあるのです。
と感じたら、もしかするとそれはバスケット売りしているアルゴかもしれません
ふるい落としの見分け方|判断に必要なのは「長期の材料」
決算前に株価が下がり始めた場合、それが、
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- 一時的なふるい落としなのか?
- 本格的な下げなのか?
という見極めが重要になります。
もちろん株価を完全に読むことは不可能なので100%見極める方法はありません。
ただ判断材料として非常に重要なのが「背景に長期的な(買いの)材料があるか?」です。
業績が順調に伸びていたり、自社株買いが継続して行われていたり、背景に中〜長期的には上を見る材料がある場合は、短期的な下げはふるい落としの可能性が高まります。
逆に、今までの上昇を引っ張ってきた材料が終了したり、新たな悪材料が出てきた場合は、ふるい落としではなく本格的な下げ相場の転換点の可能性が高いと判断できます。
また中長期の移動平均線が上を向いていたり、トレンドラインが右肩上がりを維持しているなど、テクニカル的な部分も判断材料になります。
「中長期はまだ上だな」と多くの投資家が判断する材料があれば、短期的に下がったところで押し目買いが入ってくるので反発する期待値は高いというわけですね。
決算の動きは難しい|好決算なのに下がることもある
決算の動きというのは多くの投資家の思惑(ポジション)が動くので本当に難しいです。理屈通りに動かないどころか、理屈と逆にいくことが多々あります。
好決算なのに爆下がりするというクソみたいな理不尽を目の当たりにして、株のトレードに嫌気がさす投資家も数多くいますし…。
好決算なのに下がるというのも、投資家の心理的な動きが影響しています。
その点については下記記事で詳しく書いたので参考にしてください。