「株式投資はゼロサムゲームではない」は正しいのか?【プラスサムになる理由】

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トレード チャート

株式投資というのものが「ゼロサムゲーム」か「プラスサムゲーム」かという議論が投資家の間でよく起こります。

何度も同じ議論が繰り返し行われるので、この記事で私なりの結論をまとめておきたいと思います。

まず簡単な用語の説明は以下の通り。

ゼロサムゲームとは?

参加者の得点(利益)と失点(損失)の合計(サム)が「0」(ゼロ)になるゲームのこと。

要するに、誰かの利益は誰かの損失から生まれているという性質のもので、富が敗者から勝者に移動するだけで全体の富の量は常に変わりません。

プラスサムゲームとは?

参加者全員の利益の合計(サム)がプラスになるゲームのこと。

参加者全体の富の総量が増えるという性質なので、ゲームを続けていけば富の量は増えていくゲームと言えます。

※ちなみに、参加者全員の利益の合計がマイナスになるゲームを「マイナスサムゲーム」と言う。取引のたびに胴元が手数料を抜く競馬・パチンコ・宝くじなどギャンブル系が当たる

 

さて、株式投資はゼロサムゲームだろうか?プラスサムゲームだろうか?

株式投資の書籍などには「株式投資はプラスサムゲームである」とメリットとして書かれていることが多いです。

しかし私は個人的にこれは正確ではないというか、表現が足りないと思っていて、

 

正確にいうと株式投資というのは…

  • 長期投資であればプラスサムゲームであり、
  • 短期投資(=投機)であればゼロサムゲーム

と考えるのが正しいところだと思っています。

 

短期トレードで財を成した投資家が「株式投資はプラスサムゲーム」と言っているからといって、じゃあ同じようにみんなが短期トレードをして全員がプラスサムになることはまずあり得ません。

事実、株式投資では相場参加者の8割は負けているとさえ言われています。

株式投資がプラスサムゲームならば全員が利益を得ているはず。なのになぜ、負けている人の方が圧倒的に多いのか?

下記で詳しく書いていきます!

目次

長期投資であれば株はプラスサムゲームと言える理由

積立投資

王道な資産形成方法であるインデックス投資をはじめ、10年単位の長期投資であれば株式投資はプラスサムゲームであると言えます。

まず勘違いしてはいけないのは、ここでいう長期投資とは10年〜20年という時間軸の資産形成です。長期保有が前提で、そう簡単に売ったり買ったりしません(積み立て購入は別)。

半年〜1年程度の時間軸で売買するのもスイングトレードの範疇であり、長期投資ではありません。

株式投資をプラスサムゲームにするには、10年単位の長期の時間を味方にすることがとても大事になります。

その理由は大きく2つあります。

  1. 株は配当利回りが還元されるから
  2. 世界経済は長期的には必ず成長するから(=株は長期的には上がる)

分けて説明しましょう。

1. 株は配当利回りが還元される

株式投資がプラスサムゲームになる要因の半分は「配当金」です。

配当金とは言わずもがな、企業が儲けた利益の一部を投資家に分配するお金のことで、株を持っていれば企業の配当額に応じて年1〜2回配当金を受け取ることができます(※配当金を出してない企業も一部あり)

なので、仮に株価が1円も動かないとしても、企業から毎年配当金が貰える分だけ投資家のお金は増えていく(=プラスサム)ということです。

配当金は、決められた権利確定日という特定の日に株を持っている投資家だけが受け取ることができます。

インデックス投資(投資信託)であれば、配当金は自動再投資にしている人が多いと思います。その場合は自動で受け取った配当金も買い付け分に回されています。

そのため、配当金は少なくとも半年〜1年以上の時間軸で株を保有している人しか受け取れません。

デイトレーダーをはじめとする短期投資家には配当金はあまり関係ないため、配当金のプラスサム要素を享受できません。

また、配当金はいっても年間でほんの1〜3%程度が普通なので、1年や2年分もらったくらいではそこまで旨味はありません。それこそ、その間に株価が数%下落すれば簡単に帳消しにされてしまいます。

しかし、その年間たった数%の配当金を10年20年30年と貰い続けると複利で増えていくのでバカにならない金額になります

仮に100万円の資金で年間3%の配当金を30年貰い続ければ、30年後に100万円→約250万円となり配当金だけで資産は2.5倍になる計算です。

配当金を何十年も貰い続けることができれば、株式投資は圧倒的なプラスサムゲームと言えるわけです。

 

ただ、こう疑問を感じる人もいるかと思います。

 

「配当金もらい続けたところで、将来それ以上に株価が下がったら帳消しにならない??」

 

これはその通りで、将来、受け取った配当金分以上に株価が下がってしまったら当然ながら資産額は目減りします。現在の株価が10年前の1/5や1/10になっている銘柄なんていくつもあります。

株価が将来上がるか下がるかわからないのだから、たとえ配当金を貰い続けても数十年後に資産がプラスになってるかは分からないはず……という考えは至極正しいです。

ただ、ここで重要なのが理由②の「株価は長期的には上がる」です。

2. 世界経済は必ず成長するから、株は長期的には上がるもの

下記のチャートは、アメリカ株の指数「S&P500」の過去60年間くらいの株価チャートです。

SP500月足チャート

所々で、ITバブル崩壊やリーマンショックやコロナショックによる大暴落を描いてきましたが、60年という長期の時間軸で見れば右肩上がりで上昇しているのが分かります。

S&P500や日経平均のような「経済全体の指数」とされる株価は、数十年〜100年といった”時代”と呼べるくらいの長い時間軸では右肩上がりで成長するものです。

理由はシンプルで、人間社会というのは必ず進化し成長していくものだからです。

世界中で核戦争でも起きて文明そのものがリセットでもされない限り、人間社会の進歩は不可逆です。今後景気が後退して大不況が訪れたとしても、江戸時代の社会生活に戻ることは絶対にありません。

人間社会がより便利な生活を求め、企業が経済活動を続ける限り、経済は長期的には必ず発展していきます。それに応じて、株価も上がっていきます。

インデックス投資が長期の資産形成で最善と言われる理由は、インデックス投資がこの「数十年をかけた経済発展(=株価の上昇)」に乗るものだからです。

上記の株価チャートを見れば一目瞭然ですが、数十年前からS&P500を買っていた人で現在損をしている人はいません。長期で保有し続けた人は全員が大きな利益を得ている状態です。

この50年間は主にIT分野の革命によって人類社会は大きく進歩し、それに伴いGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの総称)が牽引して米国株ひいては世界の株価を大きく押し上げました。

同じように、次の50年〜100年でもまた新しい技術が生まれ、社会は確実に進歩し、それに伴って株価は押し上げられていくはずです。

その間、株式投資をし続ければ、社会の発展に伴う株価の上昇に加えて、その間の配当金も貰い続けることで資産は指数関数的に増えていくでしょう。

これが、株式投資が長期ではプラスサム(それもとんでもないレベルの)になる理屈です。

 

ただし注意点として、長期投資の場合は社会全体の発展にかけるのであって、個別の企業にかけるわけではないということです。

つまり特定の企業の株ではなく、世界株インデックス(世界経済全体)や米国株インデックス(アメリカ全体)に投資するインデックス投資の方が再現性が高いです。

100年後の人間社会が今より発展していることはほぼ確実に断言できますが、100年後のソフトバンクが今より大きくなっているかは全く分かりません。下手したら倒産して消えている可能性すらあります。

 

なので結論ですが、

株式投資のプラスサムゲームの性質を最大限に享受するのであれば、

「世界株に数十年の長期投資する」

がやはり最適解になります。

世界株に数十年投資すれば、社会の発展による株価上昇にも乗りつつ、その間の配当金分も受け取り続けることができるからです。

インデックス投資については下記記事で詳しく書いているので、その辺の知識がまだない人はぜひ参考にしてください。

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短期投資(=投機)は全てゼロサムゲームだと考える

チャート

デイトレード(1日単位)やスイングトレード(数日から数ヶ月くらい)のような、いわゆる「トレード」のことをここでは全て短期投資に分類します。

そして現実的に、株を始める人の多くは長期投資ではなく短期投資をします。

なぜ人は堅実に資産形成できる長期投資ではなく、短期投資をしたがるのか?

世界一著名な投資家であるウォーレン・バフェットは言いました。

「ゆっくり金持ちになりたい人間なんていないんだよ」

その通り、人間誰しも「早く金持ちになりたい」わけで、20年後30年後なんて待ってられるかって話です。

そもそも短期投資=トレードは「投資」ではなく「投機(≒ギャンブル)」だと主張する人もいますね。

短期投資がギャンブルたるゆえんは、純粋なゼロサムゲームつまり”投資家同士の利益の奪い合い”の性質が強いからです。

短期投資は、ほんの短期間の株価の上下で利鞘を取ることを目的とするもので、上記で書いてきたような「配当金」や「世界経済の成長」による株式投資のプラスサム要因を享受しません。

厳密に言えば、企業の自社株買いや公的機関の買いなど市場外から資金がなだれ込んでくることもありますが、そんなピンポイントな事例を持ってして「株はプラスサムゲームだから!」と短期トレードをするのは認識が甘すぎるというか……。

短期トレードでプラスサムの恩恵を受けようなんて考えない方がいいです。プラスサムの恩恵は長時間をかけて初めてまともに受け取れるものなので。

短期トレードをする以上、それは投資家同士の殴り合いによって投資家の金が右へ左へとグルグル移動するだけの勝つか負けるかの世界。

つまり誰かの損失が誰かの利益となり、その逆も然り。

そのくらいの認識とリスクを覚悟した上で行うものだと思った方がいいです。

 

8〜9割は負けていると言われているトレードの世界は基本的に勝者総取りになります。ゼロサムゲームで勝者1人:敗者9人だと、つまり負け組9人分の損失が1人の勝ち組トレーダーの莫大な利益になる世界です。

上手くいけば短期間で資産を2倍どころか10倍20倍にすることもできるわけで、それこそ仮想通貨バブルのような上昇相場では億り人(資産1億円越えの人)が大量発生しました。

しかし前述の通りゼロサムゲームである以上、その1人の莫大の利益は10人20人の損失によって作られているのを忘れてはいけません。1人の勝者は、10人の屍の上に立っているのです。

 

短期投資と長期投資どちらがより資産を増やせるか?

9割の人は長期投資の方が資産を増やせる

身も蓋もない残酷なことを言いますが、

10人中9人は短期トレードを頑張るより、黙って長期投資して寝ていた方が20年後30年後の資産額は遥かに大きくなっているはずです。それが現実です。

8〜9割は負けていると言われているので、

こちらは有名な投資セミナーの資料写真。10年間の株成績がもっとも良かったのは1位が「亡くなった人」、2位が「運用を忘れていた人」であるという皮肉です。

つまり、株はずーーっとただ保有しておくのが長期的にはもっとも資産が増えるという現実を示しています。

普通に働いている人であれば、証券会社で世界株インデックスの自動積立の設定(毎月◯日に○万円ずつ買うなどの設定)をして、あとは株のことなんか忘れて本業頑張るくらいが一番良いとさえ思います。

日々の短期的な株価の動きに一喜一憂したり集中力を持っていかれる心配もないし、変なところで売却したりしなくて済みますからね。

私が短期投資もしている理由

今さら書くことですが、私は長期の積立投資(世界株インデックス)と短期投資の両方を行なっています。

具体的にはなので、証券口座に入れている資金の半分以上は愚直に世界株インデックスの長期積み立てに回すことを自分ルールとしていて、もう半分以下の資金で日本の個別株のトレードをしています。

大体数日〜長いと数ヶ月くらいの時間軸でのトレードです。デイトレは基本しません(専業トレーダーでないので、日中そんなに見てられないので)。

なぜ10人中9人は負ける短期投資をしているのかというと「今のところ10人中1人の勝ち組に入っている(短期投資で良いパフォーマンスが出せている)から」です。

私はトレードを初めて6年ほどになりますが、年間で負け越した年は今のところ1年だけ。残りの年は年+20%〜600%と激しい上下はありますが、基本的に資産を増やせています。

例えば世界株インデックスの長期投資だと期待できる年間パフォーマンスは5%前後と言われているので、今のところは長期投資よりも遥かに良い成績でトレードができています。

ただし…あくまで「今のところは」です。

私は自分のトレードの力を絶対に過信しないので、このパフォーマンスが20年〜30年続けられる自信はありませんし、持たないようにしています。どこかで大損して、結局長期投資に負ける成績に落ちる可能性も十分あります。

 

「裁量トレードは長期的にはインデックスに負ける」とよく言われます。

これはヘッジファンドの運用成績で、アクティブファンド(裁量トレードで運用するファンド)の成績がほぼインデックスに劣後しているデータから証明されています。

ただ私個人的には、ファンドのような機関投資家には無理でも、個人投資家であれば裁量トレードでインデックスを上回る成績を出すのは可能だと信じています。

あくまで願望混じりで「信じている」だけですが。

ファンドには無理でも個人投資家ならインデックスに勝てる理由については、書き出すとかなり長くなるので別の記事にしたいと思いますが、一つの事実として、実際にBNF氏cis氏をはじめとして莫大な利益を上げている個人投資家がごまんと実在するからです。

10人中9人が負ける世界であるならば、努力して10人中の1人を目指せばいい話。むしろ努力して上位10%に入るだけで大きく稼げる可能性がある株式トレードという競技は夢があるとさえ感じます。

少なくとも、宝くじやパチンコや競馬に金を使うくらいなら、そのお金で株式トレードした方が遥かに資産を増やせる可能性高いと思っています。

また、トレードをすることで日々の経済情報を追ったり企業分析をするようになるので、経済知識や金融知識が嫌でも身つきます。その点もメリットだなと感じますね。

【結論】長期投資も短期投資もどちらもやればいい

私なりの結論として、長期投資はインデックス積立をしておいて、さらに余裕資金で短期投資=トレードに励んでみるのは大いにアリです。

ただ注意点として2つあります。

  1. 短期投資に全資産をブチ込まないこと
  2. 長期と短期で口座を分けた方がいい

前提として、資産形成(=長期投資)と金儲け(=短期トレード)は別物と意識しましょう。

私のように少なくとも資産の半分〜7割以上は長期の積立投資をしておき、余った余剰資金で短期トレードに挑戦してみるくらいの心持ちが精神的にも健康でいられます。

間違っても一攫千金を狙って全資産で短期トレードに挑戦するなんて真似はやめておきましょう。

また、長期積立用の証券口座と短期トレード用の口座は絶対に分けた方がいいです。

短期トレードで負けると、取り戻すために追加入金したくなるのが人間というもの。その時に長期積立と同じ口座を使っていると、せっかくの積立を取り崩して短期投資にブチ込むという最悪の蛮行に出る可能性があります。

 

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