「信用買い残が増加すると株価が下がる・上がらない」は当てにならない理由

本記事にはプロモーションが含まれています
JR東日本チャート

「信用買い残が多いと株価は上がらない≒下がりやすい」と言うのは、ある程度、株を触っている人なら誰もが聞いたことがあると思います。

とくにこれが言われるのは、株価が下落中のとき。

株価が下落しながらも信用買い残高が増え続けていると「買い残溜まりすぎて上値が重いね」「買い残のせいでまだまだ落ちそう」というコメントが必ず出てきます(ヤフーファイナンス掲示板で)

しかし私の経験上、これそんなに当てにならないと思っています。

むしろ体感的には、ずるずると長く下げ続けている銘柄の信用買い残が膨らみ続けたタイミングで大きく反発することの方が多い気すらしています。

下記では、信用買い残が株価に及ぼす影響と、信用買い残が増えたところで大きく株価が上がり始めた事例をいくつか挙げていきます。

目次

信用買い残が多いと株価が下がると言われるのはなぜか?

株 暴落

まず、信用買い残(ひいては信用取引)が株価にどのような影響を与えるのか? その力学から簡単に説明します。

信用買い残が多い=暴落!と短絡的に認識するのではなく、なぜ信用買い残が多いと下がる方向に圧力が働くのか?という力学を理解しておくことが大切です。

信用買い残とは?

信用買い残とは、信用取引で買ってる投資家の量(ポジション量)のこと。

信用取引については初歩的なことなので詳しくは割愛しますが、要するに証券会社から借金してレバレッジをかけた取引を行うことです。

信用取引が、普通の株の売買(現物取引)と大きく違う点は2つ。

    1. レバレッジをかけられること
    2. 必ず反対売買によって「決済」しなければならないこと

レバレッジについては割愛するとして、大事なのは2つ目の「必ず決済しなければならない」という点です。

信用買い残が株価の下落圧力になり得る理由

信用取引による「買い」は、普通に現物の株を買う場合と違って、ずっと保有していることができません

信用取引は言わば「借金して取引している状態」なので、必ず決まった期日までに、反対売買(買いの場合は売却)によって返済する必要があります。

つまり信用買いをしている場合は、期日までに必ず売ってポジションを解消することになります。

期日は信用取引の種類や証券会社によって異なりますが、例えば制度信用取引だと6ヶ月以内の返済がルールになっています。なので6ヶ月以上にわたって買いポジションを維持することはできず、必ず6ヶ月以内に売らなくてはいけません。

何が言いたいかというと、信用買いは必ず一定期間内に売られる運命にある(将来の売り圧力になる)ということです。

そのため信用買い残が増加するということは、それだけ将来の売り圧力が増えていることと同義であり、株価が上がらない=下がる方向への圧力とみなされるわけですね。

 

さらに言うと、信用取引はレバレッジをかけた大勝負になるため、短期トレードに使われる側面がとても強いです。

そもそも返済期日があるので長期的にガチホできませんし、レバレッジをかけている分、少しの株価変動で資金が大きく増減するため、心理的に大きな動きに耐えられず秒速で損切りがされます。

なので、信用取引のポジションというのは基本的に足が早い(すぐ利確・損切りがされる)性質があります。

信用買い残が大きく増えている時にさらに株価が下がると、その足の早い信用買いの人たちがすぐに損切りして逃げようとするため大きな売り(反対売買による決済)が入り、株価がさらに暴落するという流れ。

多くの人が「下落しながら信用買い残が増えた=さらなる暴落注意!」と言うのは、上記のような力学が働くためです。

 

信用買い残が増えたらむしろチャンス?株価が上昇した事例

ここまで、信用買いが増えたら下落圧力になる理由を説明しましたが、冒頭で書いた通り、私の今までの投資経験上、信用買い残が増え続ける=株価が下がり続けるという実感はないです。

というよりも、多くの人が警鐘する「信用買い残の損切りによってさらに株価が下落していく」という現象はそんなに起こらないです。

むしろ、株価の下落中に信用買い残が増え出していき、パンパンに増えてところで大きく株価が反発、上昇中に信用買い残が減っていく…という流れの方が体感多い気がします。

実際の事例を見てみましょう。

9020 JR東日本の場合

JR東日本チャート

上記は、JR東日本(9020)の直近の週足チャートです。

2022年10月あたりから下がり始め、2023年2月末ごろに底値をつけて3月以降に大きくV字反発している動きです。

その間の信用買い残の推移を見てみると下記の通り⬇︎

JR東 買い残増減

信用残高の推移は、株探Yahooファイナンスで見ることができます。

上記の推移を見ると、2023年初頭から目に見えて信用買い残が増え始め、同年3月から現在5月に至るまでに一斉に解消(買い残の減少)されていってるのが分かります。

上記の動きを株価チャートに重ねてみると⬇︎

JR東チャート

上記を見ると、信用買い残がMAXに増えたタイミングが株価の底となっているのが分かります。そして、その後の大幅反発にしたがって信用買い残はどんどん減少。

これだけ見ると、暴落中に信用買いを仕込んだ大口が、その後の大幅反発で狙い通りの利確していったと考えるのが自然でしょう。

 

実は、私はまさにこの大底の時期にJR東の現物株を買っていました。

6900円台で買い始めたものの、3週間ほど底値をウロウロしてストレスMAXだったわけですが、その間に色々な掲示板やSNSなどをチェックしていると、

「信用買い残が増え続けてるからまだまだ下がる!」

「ナンピン買いしてるアホ投資家たちが全滅するまでは買えないね」

というお決まりの声で溢れていました。

しかし結果をみると、「そこ」が「底」だったわけです。

 

8219 青山商事の場合

青山商事チャート

もう一つの例を見てみましょう。上記は青山商事(9020)の日足チャートです。

2023年初頭から5月まで、多少の浮き沈みはあるものの底を張ったような動きで、5月中旬から爆発的に上がりました。

5月に何があったかというと決算です。大幅増配などを発表したために一気に爆上げしました。

上記の期間の信用買い残の推移を見てみると⬇︎

青山商事 信用買い残

一番右の数字が週毎の信用買い残の増減です。

3月17日の週から4月7日の週まで一貫して増え続け、4月14日の週から5月26日現在の週まで一貫して減り続けています。

とくに5月19日の週には-163400株とかなり大規模に買い残が減っているのが分かります。

信用買い残の推移をチャートに当てはめてみると

青山商事チャート

ご覧の通り、見事に株価が底値の期間に信用買いが溜まり、その後の大幅上昇にかけて一気に減っていってるのが分かります。

一部、株価が大幅ジャンプする前の段階で信用買いが減り始めていますが、5月12日の決算ギャンブルを回避するための信用ポジション解消の動きであることが見て取れます(決算回避組)。

大幅上昇した5月19日週の-163400株は、底値期間に信用買いを仕込んだ大口たちの利確売りでしょう。

これをみると、信用買いをしていた人たちのナイストレードであることが読み取れます。

株価下落中の信用買い勢が「バカ」とは限らない

上記の例を通して何が言いたいかというと、株価下落中の信用買い残増加はバカ投資家のナンピン買いとは限らないということです。

むしろ、大口投資家による買い仕込みの可能性の方が全然あるかもしれません。

それなりに投資経験のある人でさえ、株価の下落中に信用買いが増えていることをかなりネガティブに捉える人が多いです。

「バカな初心者投資家がナンピン地獄してるわww」と。

なぜか、下落局面での信用買い残増加を、素人投資家のナンピンだと思い込む人が多いのです。

しかし上記の例を見ても、その信用買いは大口の仕込みである可能性が多々あります。信用買い残がピークに溜まったタイミング(大口が仕込み完了したタイミング)で、株価が大幅反発することが往々にしてあります。

信用買い残というのは、株価が下落すると増え始め、上昇すると減り始めるのが普通のことです。

信用買い残の推移は、そこまで当てにならない

この記事で私が言いたいことは、

「”信用買い残が増えると下落しやすい”は嘘! 実際は信用買い残が増えてピークに達したところが底である!」ということでは決してありません。

ただ、そのような事例は結構あるため、

巷で言われる「信用買いが増え続けている=まだまだ下がる」という説はそこまで当てにならない

ということです。

 

私は現物取引が基本ですが、保有株の下落中に信用買い残が増えてきたからといって焦って売却することは絶対にありません。信用買い残の増加をそこまで重要視してないからです。

ましてや、信用買い残の増加を根拠に「こりゃまだまだ下がるだろ!」と空売りポジションをブッ込むなど言語道断。そういう人は大体焼かれて死にます。

 

そもそも、信用残高などという「誰もが見られる情報」で株価の上下が当てられるなら、誰もが億万長者になれます。そんなんで当てられるなら誰も苦労せんわって話です。

しかし、誰もが簡単に見られるデータなだけに、それを信じたり根拠にしやすいもの。Yahooファイナンスの掲示板を見れば、「買い残が〜」と信用残高を根拠に株価の動きを予想しようとしてる人がめちゃくちゃ多いことが分かります。

が、結論として、ぶっちゃけ信用残高の推移で株価の動きなんてそう予測できません。

下落局面で信用買い残が増えることなんて「至極自然なこと」です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次