終身雇用が少しずつ崩れ始めたことで、日本においてもようやく転職の1回や2回は当たり前の時代になってきました。とはいえ統計的にみると、転職でキャリアや給料アップするケースは1回目が最も多く、以降は2回3回と繰り返すごとに給料ダウンしていくのが今の日本の転職市場です。
つまり、転職というのは人生で1回か2回だけ誰でも有効に切れる貴重なカードであり、煽る言い方をすれば失敗が許されません。
ただそのわりには、ぶっつけ本番の体当たりで挑んでくる人があまりにも多いのが実情です。私は以前勤めていた会社で採用担当をしていたのでそれなりに多くの求職者を見てきましたが、落ちる人というのはとにかく認識の甘さと準備の甘さが目立ちます。
なのでこの記事では、元採用担当の視点から転職において最低限知っておきたい準備と対策をいくつか挙げていきます。
転職は、人生を大きく変えられる貴重なカードです。絶対に無駄にしないようにしましょう。
転職・面接の成否は準備段階で8割決まる
転職面接は、自分という商品を売り込むためのプレゼンの場であり営業行為です。決して、ありのままの自分を見てもらう場ではありません。
売り込むためには、準備と戦略が必要です。
プレゼンの資料を作るように、自分という商品の企画書を綿密に企てていきましょう。
売るのは「利益」。ポテンシャルはもう売れない。
たまに新卒採用と同じノリで中途採用の面接にくる人がいますが、新卒と転職とでは全く趣旨が異なります。新卒採用で売るのはポテンシャル(将来性や潜在能力)ですが、転職採用で売るのは即戦力性です。
やる気や情熱、将来性といった曖昧な言葉は通じず、「自分を雇うことで得られるメリット」を明確に相手に提示しなければならないのが転職、中途採用です。
※社会人3年目あたり、25歳前後の若手であれば「第二新卒」に分類され、まだポテンシャル評価で採用されることがあります。
「頑張ります!」や「やる気はあります!」といった姿勢は捨てましょう。ポテンシャルはもう売れませんから、自分を雇うことで相手が得られる利益やメリットを「売る」のです。
が、その利益やメリットが簡単に言えれば苦労しません。では、どうするか?
企業のリサーチから「穴」を見つける
「自分に売れるスキルや経験なんか正直ない」と悩む人も多いと思いますが、大丈夫。世の中で売れている商品や製品だって、実際買ってみたらそうでもなかった……という経験は誰しもあるでしょう。
つまり、モノを売るには「見せ方」の方が大事なのです。
人にモノを売るためには、最低抑えるポイントが2つあります。
- 人が不満に思っている、満足していない、充足していない「穴」の部分を探す。
- その「穴」にぴったりハマる、満たすことができる商品を差し出す。
本質的にはこれだけです。
(1)はつまりニーズです。相手の足りていない・満足していない「穴」の部分を見つけ、「私ならその穴を埋められる・改善できる」と”見せかける”だけで買ってくれる相手は腐るほどいます。
この穴を見つけるためには、企業のリサーチが欠かせません。ほとんどの人がリサーチに手を抜いていますが、調べるべきことは山ほどあります。
- 企業の財務状況
- 企業の事業戦略
- 募集ポスト(前任者)の情報
- 上司・面接官の情報
企業の財務状況や事業戦略については、企業HPのIR情報で詳細に公開されています。IR情報をしっかりチェックしておけば、企業がどんな分野に力を入れていて、どこがリソース不足なのか、どんな理由で人材を募集しているのかが見えてきます。
また、前任者や面接官などの情報は、転職エージェントを利用して手に入れます。エージェントは企業側とパイプを持っているので、こうした内部情報まで把握しているので必ず聞いておきましょう.
とくに前任者の情報は抜けた穴そのものなので、その概要がさえ分かれば、自分がさもそこにハマるようにプレゼンすることで勝率はグッと上がります。
面接前のリサーチについてもっと詳しくは下記記事を参考に。
転職・面接のコツと対策
続いては、実際の面接現場における対策とコツを紹介していきます。
実際の採用の可否というのは、あなたの書類や示せる利益といった具体的要素でほぼ決まるもので、立ち振る舞いや人柄というのは「本当にこの人を採用して大丈夫か?」という再確認のために見ています。
つまり、基本的に面接での振る舞いは減点方式なので、いかにマイナス印象を与えないことが大事かを意識しておきたいところ。
そんなことを踏まえつつ、私がかつて採用側の椅子から求職者を見ていて「こうすればいいのに」とか「それはしない方がいいのに」と思ったことをいくつか挙げてみます。
自分がどう利益に貢献できるのかを分かりやすく明確に。断定して言い切ること。
先述した通り、転職おいては「自分を採用することで相手が得られるメリットは何か?」が最も重要なファクターになります。
ここはリサーチ段階でしっかり練りに練っておき、自信を持って宣言できるようにしておきたいですね。自分のスキルや前職の経験がどこの分野で活かせそうなのか、多少強引でもいいので言い切ってしまった方がいいです。
「〜かもしれません」
「〜かと自分では思っています」
「〜ができたらと考えています」
といった断定を避けるような言い方は避けましょう。
そして一つ、エピソードなどを相手に語るときに有効な技法として「PREP法」というものがあります。退職理由や志望動機を簡潔かつ説得力を持たせながら伝える時にPREPが効果的です。
PREP法とは、
- Point……(結論)
↓ - Reason……(理由)
↓ - Example……(具体例)
↓ - Point……(最後のまとめ)
この順番で話を構築することです。
まず最初に結論から述べ、続いてその理由を簡潔に説明し、自分の具体例を提示し、最後にまとめの意見で締めくくる。
この構成を意識するだけで、要点が相手の頭にスムーズには入りやすいので、基本的な技法としてぜひ押さえておくといいでしょう。
面接の練習は必ず録画してチェック
面接の練習は必ず一回録画してみて自分でチェックしましょう。
人間は、自分が普段どう喋っていて、どんな仕草をしているか全く自覚していません。
自分が喋っている動画を見て「え、俺ってこんな声してるの!?」とか「喋ってるときこんなニヤニヤしてるの!?」とか「こんな猫背なの?」とか、初めて見る「自分」に衝撃を受けた経験は誰しもあるはずです。
あえてはっきり言いましょう。
あなたは、あなたが思っているより気持ち悪いです。
- ことあるごとに目線が上を向いたり
- 語り出しに必ず「えー」がついたり
- 喋るとき常にニヤついていたり
- 肩が内向きになっていたり
- 猫背になっていたり
- 声が意外と小さかったり
- 語尾が震えていたり
私も転職時に実際に録画しましたが、はっきり言って衝撃でした。もちろん、絶望的な意味での衝撃です。
声も小さいし、全然ハキハキ喋れてない……。おまけに猫背で、緊張すると足が内股気味になるクセも発覚して、これは自分で見ても「こんなヤツ絶対取らないわ」と思える有様でしたよ。
客観的に視線で自分自身を一度チェックしておくのは大事なことです。
身だしなみや振る舞いは最大限に整える
外見が人に与える影響力は甚大です。採用においても、いわゆる「顔採用」があるのは紛れもない事実であり、ちょっとした清潔感のなさや品性の欠落が落ちる原因になるなんて普通のことです。
ただ勘違いしてはいけないのは、ここでいう「外見」とはイケメンや美女の限定的な意味ではありません。もっと広義の意味で、外見や立ち振る舞い・口調・クセなどから見える「清潔さ」や「自信」のようなものです。
「外見は一番外側の中身」とはまさにこのことで、その人の外見にはその人の内面が如実に現れるものです。
- 髪がボサボサ
- 髪が長すぎ(←やはり長髪は毛嫌う人が多い)
- 服がシワシワでよれている
- 無精ヒゲ
- 姿勢が悪い
- 喋ると視線が泳ぐクセ
- すぐにうつむきがちになるクセ
などなど、こうしたもの全てを含めての「外見」でありマイナス要素になりかねません。
クセなどの振る舞いについては前述の面接録画対策で改善し、身だしなみについては自分のできる最大限の清潔さを整えて臨みましょう。ヒゲを綺麗に剃る、服にアイロンをピシッとかける、髪を爽やかにまとめるなど、どれも一手間あればできることです。
新卒就活の時はプロフィール写真1枚さえプロに撮ってもらっていたはずなのに、中途採用になるとビジネスシーンに慣れてしまったのか、ビックリするほど(悪い意味での)普段通りのラフな感じでくる人多いです。
別に身だしなみをキメたからといって勝率がグンと上がるわけではないですが、できる部分は改善はしないに越したことはありません。
下記記事に詳しく書きましたが、就職面接において広義の意味で「顔採用」はあります。
話を多少”盛って”でもネガティブな話はしない
「転職」という行為は、その時点で「前の会社を辞めた」というネガティブ要素を必ず含んでいます。しかし、そこを馬鹿正直にネガティブストーリーとして話すのはかなりの悪手です。
- 前の会社はブラックだった
- 上司にパワハラされて喧嘩した
- うつ病になってしまい
- 前の職場では力を発揮できず
- 自分には雰囲気が合わず
- 実力に伴った評価が得られず
などなど、前の会社をディスったり、自分に自虐的な話をするのは論外です。たとえそれが真実だとしても絶対NGです。
繰り返しますが、転職面接はありのままの自分を見てもらう場ではありません。自分という商品を売るための営業の場です。嘘をつけとまでは言いませんが、見せ方を考えましょう。
退職理由と志望動機には一貫性がなければなりません。つまり「なぜ前職を辞めたのか」と「そこでなぜ当社を志望するのか」に一貫したストーリーが必要です。
なので、
- 「
前職を辞めたかったから転職した」 - 「御社で仕事をしたかったから転職した(退職した)」
というポジティブなストーリーを用意しましょう。
「最後に質問ありますか?」は答えておく
「最後に質問はありますか?」面接の最後に必ず聞かれますよね。何かしら無理やりにでも質問すべきかどうか悩む人多いと思いますが、結論から言うと何かしら用意しておいた方がベターです。
8割型この時点で採用側の内心では採用不採用は決まっているものですが、まだ決めかねている時に最後の一手が決め手になることもありますし、向こうも入社への意欲や興味を試すために聞いてくるケースがあります。
この質問は企業のIR情報などをリサーチしながら、なるべく具体的な質問ネタを用意した方がいいです。
もしどうしても具体的な質問ネタが出せなければ、「質問」でなくても良いです。
「本日、多くのお話を聞けて、ますます御社で仕事をしたい想いが強くなりました」
これだけの最後っ屁のアピールでも、ないよりはマシです。
逆にここで聞いてはいけない質問の悪例としては、下記の通り。
- 待遇に関する質問
- 抽象的すぎる質問
- ホームページやIR情報を見れば分かる質問
終わりよければ全て良しという言葉があるくらいに、終わり方の印象はその後の記憶に大きな影響を与えます。ラストが好印象であれば、その後に思い返した記憶も自然と好印象補正がかかるもの。これを使わない手はありません。
まとめ
転職というのは営業なので、商品自体のスペックよりも「誰に売るか」と「どう売るか」の2つのマーケティング戦略が勝負を分けるものです。
転職で失敗する人というのは、ここのリサーチと戦略に対して「そんなこと全然考えていませんでしたー」という人がほとんどです。
転職エージェントを利用すれば、情報や知識や知恵はいくらでも手に入ります。人生を変える転職ですから、こうした準備には万全を期しましょう。
【おまけ診断テスト】自分の「才能」に気づいていますか?
仕事ができるビジネスマンと出来ないビジネスマンの差は、意外と「自分の才能・資質を知っているかどうか」だけの差だったりします。
仕事ができる人ほど「自分が得意なこと」を仕事にし、仕事ができない人ほど「自分が好きなこと」を仕事にしようとします。
仕事が非常にできる2割の人間は、自分が得意なことを仕事にしている人。
仕事を普通にこなす6割の人間は、自分が得意なことを仕事にしていない人。
仕事ができない2割の人間は、自分が苦手なことを仕事にしている人。
「好きなこと」と「得意なこと」は違います。残酷なほど違います。一流と三流を分ける海より深い隔たりがあります。
世界最高のサッカー選手であるリオネル・メッシは、FW(フォワード)というゴール前20m四方のエリア内でのみ世界最高の選手でいられます。彼は誰よりもディフェンスをしません。なぜか? その仕事場以外では平凡な選手だからです。
つまり「仕事ができる人間」とは、「得意な場所で、得意な仕事をしている人」なのです。
あなたは、自分の才能がどこに向いているのか把握していますか? 本当はドリブルやシュートが得意なのに、なぜかディフェンスポジションで仕事をしているせいで「仕事ができない人間」になっていませんか?
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