アルバイトの求人にはよく「正社員登用あり」という文言が載っている。フリーターでバイトから正社員の道を目指したい人にとって、正社員登用ありというのは超重要な条件だ。
しかし、この「正社員登用あり」を100%信じて期待してしまうのはやや危険である。なぜなら、実際には正社員登用する気がない(あるいは登用実績があまりに少ない)にも関わらず、応募者を”釣る”ために記載されているケースが少なくないからだ。
実際に私の友人で、正社員登用を信じながらバイトを続けたものの、結局正社員にはなれないまま5年間という大切な時間を無駄にしてしまった例がある。それなら5年若かったうちにフリーター就職専門の転職サイト/転職エージェントなりを使って就活してた方がはるかに勝率が高かっただろう。
もちろん、全ての会社の「正社員登用あり」が嘘なわけではない。会社によっては明確にキャリアアップ制度を設けていて、システム的に正社員登用が機能しているところもある。
それでも、バイト求人の「正社員登用あり」に過度に期待するのはリスクが高い。その理由を書いていく。
「正社員登用あり」は企業側に都合が良すぎる
過去に一人でも正社員になったバイトがいれば「正社員登用あり」になる
ほとんどの求人において、「正社員登用あり」に明確なルールはない。過去に1人でも正社員になった人がいれば「正社員登用(があった例が過去に1人だけ)あり」と書けるわけだ。
実際には、バイトから正社員登用された人なんて100人に1人もいないかもしれない。
正社員登用はとくに飲食やアパレルに多いが、仮に面接等などで「100人を超える正社員登用の実績があります(キリ」なんて言われても、それは会社全体(全国の店舗)での話であって、その店舗・部署からは過去1人しか実績がないなんてこともザラ。
それでも、「正社員登用あり」という一文を求人広告に入れておくだけで、正社員へのわずかな望みにかけてくる応募者を増やすことができるのである。
さらに言えば、採用後も「頑張れば正社員登用になれる可能性も(限りなくゼロだけど)あるぞ」と示しておけば簡単には辞められないし、長期にわたってコキ使うことができる。正社員登用という人参をぶら下げておくことは、企業側にとって非常に都合がいいと言わざるを得ない。
「正社員登用あり」と記載する企業には2種類ある
そもそもの話。正社員としての人材が欲しいなら最初から正社員採用すればいい話で、正社員登用の「制度」なんていらないのである。
仮に欲しい人材(バイト)を見つけて正社員に引き抜きたいなら、あくまで個別に「正社員にならない?」と話を持ちかければいい。
ではなぜ「正社員登用」なんて制度を作り、バイト求人のアピールにしているのか?
理由は以下の2種類ある。
- 「正社員登用あり」で釣らないと応募者を集められない不人気・ブラックパターン
- いきなり正社員採用するのはリスクが高い(使えない人材を採ってしまうリスク)から、バイトで下見をして本当に使えそうな人だけ正社員として引き上げたいパターン
1のパターンはまず論外である。最初から正社員登用する気はサラサラなく、正社員登用をエサにしてコキ使うタイプだ。こうした会社は面接時に正社員登用について聞くと、ほぼ答えを濁すかテキトーな返しをするので判断しやすい。
2のパターンは企業側からすれば、いきなり正社員にして使えなかった場合にクビにできないから、まずバイトさせて使える人材であることを確信してから正社員に登用したいという保険かもしれない。「正社員登用あり」と記載しても絶対に登用しないといけないわけではないし、嘘でも可能性を示しておけばバイトは頑張ってくれる。
いずれにせよ、「正社員登用あり」というアピールは100%企業側に都合が良いものである。
飲食店バイトで正社員登用を信じ続けて5年間を無駄にした友人
冒頭でもチラッと書いたが、私の友人で正社員登用を信じてバイトを続けた結果5年という貴重な時間を無駄にしてしまった人がいる。
具体名は伏せるが、一部上場企業が運営する全国チェーンの飲食店である。
友人は当時もう31歳で転職エージェントを使った就活が厳しくなっていた(※)ので、バイト先での正社員登用を目指していてバイトリーダーにまでなった。
当初、店長から「正社員登用なら3年くらいは経験積まないとねぇ〜」なんて言われていたが、3年経っても4年経っても正社員の話を持ちかけられることはなく……
そして5年経ったころ、店長が退職してしまったことで正社員登用の話はパァになった。そもそも店長からしたら「正社員登用? あぁ〜……そんな話したっけ?」程度のノリである。
結局、友人は30代半ばになった今も日雇いのフリーター生活を続けている。正社員就職の道は正直かなり厳しく、非正規としてどうやって満足に生きていくかを考えることにシフトをしているようだ。
転職エージェントは29歳以下
フリーターが正社員就職するときの最も有効な方法は、フリーター就職専門の転職エージェントを利用することだが、 ハタラクティブ をはじめとするほとんどのフリーター専門エージェントは「29歳以下が対象」という年齢制限がある。
フリーターは30歳を超えると格段に厳しくなると言われているのもこのため。
正社員登用の実績は面接時にしっかり聞いておくこと
面接時に正社員登用について聞くのは抵抗があるかもしれないが、将来をかけているのだからしっかり聞いておくべきである。
具体的には正社員登用の実績や、明確な基準・ルールがあるか(つまり登用制度が確立されているか)といったところ。
制度が確立されている会社だと、登用試験のようなものが定期的に開催されており、試験・面接を受けられる基準も「契約◯ヶ月以上」と明確に決まっている。過去データから登用実績数や率も出せるだろうから、こうした部分で正社員登用の透明性は見えてくるだろう。
もちろん、面接官が正直なところを言うとは限らない。求職者が志望動機をテキトーに取り繕うのと同じく、面接官だって「過去に登用した実績はあります(限りなく少ないけど)」とテキトーな建前を言っておくのは普通だ。
だとしても、そこで正社員登用の質問について答えを濁したり、態度を変えたり煙たがるようだと、正社員登用の可能性はほぼないと判断していいだろう。
また「バイト面接の分際で正社員登用について聞くなんて生意気と思われるんじゃ?」と不安になる気持ちもあるが、「正社員を目指す意思があります」と宣言することは本気度の現れであり、雇う側から見てもプラスになることはあれどマイナス印象になることはないだろう。
まとめ
「正社員登用あり」と記載があったとしても、大体の場合は実績数がかなり少ないと思っておいていいだろう。個人的には、そこに過度な期待をして人生をかけるのはリスクが高いように思う。
少なくとも20代のフリーターであれば、転職エージェントを使って正面から正社員就活した方がよほど多くの可能性があり勝率も高いだろう。フリーター就職で利用すべき転職サイト・転職エージェントについては下記記事でまとめているので参考にして欲しい。