ここ数年で「ミドル転職」や「シニア転職」という言葉をよく聞くようになった通り、いま40代〜50代の転職市場が盛んになっています。
かつての氷河期世代(今のアラフォー世代)の採用数が少ないせいで多くの企業でマネジメント人材(管理職)が足りていないことや、人生100年時代を見据えて長く働ける会社へ転職したい50代以上の高齢層が増えたことなどが影響しています。
しかし、40代〜50代と年を重ねるほど転職で心配なのが給料面の問題です。
しっかりとしたスキルや経験に基づいたハイクラス転職であれば年収アップも望めますが、一般的な転職では年齢が上がるごとに転職で年収ダウンの割合が上がります。
このあたり、実際の数字で見てみましょう。
40代・50代の転職で年収アップする人・年収ダウンする人の割合
転職で年収が上がる割合・下がる割合については、厚労省が毎年出している「雇用動向調査」で統計が分かります。
実際に平成30年度の雇用動向調査の数字を見てみると、40代以降の年齢では次のような結果。
年齢 | 年収UP | 年収DOWN | 変わらない |
40〜44歳 | 44.6% | 23.4% | 31.4% |
45〜49歳 | 28.4% | 30.8% | 39.2% |
50〜54歳 | 25.3% | 36.1% | 36.8% |
55〜59歳 | 21.1% | 43.3% | 34.8% |
年収アップの割合をみると、40代前半までなら20〜30代と比較してもそこまで大きな差がなくなっています。しかし、40代後半以降になると年収アップの割合はガクンと下がっているのが分かりますね。
この数字をみるに傾向としては、以下のようなイメージでしょうか。
- 40代前半:まだ転職で年収UPが狙える
- 40代半ば〜後半:現状の年収維持で転職できればOK
- 50代前半:年収ダウンは覚悟。現状維持できれば御の字。
- 50代後半:年収ダウンを受け入れる必要あり
やはりミドル〜シニアの転職者数が増えていると言っても、「年収アップ」が条件になると話は別ですね。この辺は統計的な事実として、まずしっかり認識した上で転職に望んだほうが良さそうです。
40代・50代の転職で年収が上がりやすい/下がりやすい職種・業種は?
ではもう少し突っ込んで、35歳以上のいわゆる「ミドル転職層」にとって具体的にどんな職種・業種が年収が上がりやすい/下がりやすいのか?
実際のデータをいくつか見てみましょう。
40歳以上の転職成功者が多い、狙い目の職種は?
40歳以上の割合をみると
- 営業系:6.9%
- 販売/サービス系:10.6%
- 技術系(IT・通信):14.4%
- クリエイティブ系:10.5%
- 技術系(電気・機械):14.8%
- 技術系(医療・化学):14.0%
- 事務・アシスタント系:13.4%
- 専門職系:15.5%
- 企画・管理系:19.7%
- 技術系(建築・土木):25.5%
こうしてみると、40歳以上の成功者割合が圧倒的に多いのは人材不足が深刻化している建築業界の技術系職種ですね。次が企画・管理系であり、これはマネジメントのポジションでしょう。
ただ、これはあくまで全年代の転職者に対する40歳以上の人の割合です。40歳以上の転職成功率ではないことを勘違いしないように。
建築業界は若い人が入ってこない問題があり、マネジメントポジションに若い人が少ないのは当たり前なので、こうした業界・職種で40歳以上の割合が増えるのは必然とも言えます。
35歳以上の転職で年収が上がりやすい/下がりやすい職種・業種は?
年収上がる割合高い
- 経営・経営企画・事業企画系:42%
- 営業・マーケティング系:39%
- IT・WEB・通信系:28%
- 事務・管理系:20%
- コンサルタント系:19%
年収下がる割合高い
- 営業・マーケティング:50%
- 事務・管理系:48%
- 経営・経営企画・事業企画系:23%
- サービス・流通系:20%
- コンサルタント系:9%
こうしてみると面白いですね。「営業・マーケティング」や「経営・事業企画」は年収上がる人も多いですが、それと同等かそれ以上に年収が下がる人も多いことがわかります。
そして、年収上がっている人の方が圧倒的に多いのは「IT・WEB・通信系」です。
後述で詳しく書きますが、今の時代に転職するなら狙い目はまさにIT業界ですね。
40代・50代の転職で年収アップさせるためには?
では、40代50代といったミドル以上の転職で年収UPするには、どういった点がポイントになるのか?
私は曲がりなりにも中小企業で採用担当をしていた経験があるので、いくつか重要なポイントを挙げましょう。
マネジメント経験の有無がとても大事
40代以上の転職が活況になっているのは、おもにマネジメント人材(管理職)のニーズの高まりが要因です。
前述しましたが、現在の管理職ポストの中心を担う40代前後の人材はちょうど氷河期世代にあたり、社会全体で採用数がめちゃくちゃ少ないために多くの企業でこのゾーンの人材が不足しているのです。
実際に転職実績の多いポジションは「部長・次長クラス」が45%、「課長クラス」が35%と高くなっています(ミドルの転職調べ)。年収800万円以上の転職成功者のうち約76%が40代以上とされているので、40代でマネジメントポストに転職できれば、年収アップの可能性も高まります。
さらにマネジメント能力が問われるポジションは異業種でも採用されやすいので、転職成功率も高まります。
逆にマネジメント経験なしで40〜50代が転職するとなると、求められる仕事はコールセンターや配送や梱包作業といった「スキル不要で誰でもできるけど人が集まらない系」の仕事ばかりになります。こうした職種はブラックも多いので、転職して後悔してしまうケースも少なくありません。
大企業より中小ベンチャーを狙って役職をあげる
40代〜50代といったミドル以上の転職の場合、大企業よりも中小ベンチャー企業へ転職した方が年収が上がるケースが多々あります。
これは、同じ役職クラスなら当然大企業の方が年収が上のケースが多いですが、中小ベンチャーに転職することで今より上の役職ポストに上げられる可能性があるからです。
そもそも大企業ではまだ年齢による採用基準を敷いている企業が多いです。むしろ大企業は早期退職募集が盛んなくらいで「上が詰まっている」状態なので、募集される管理職ポスト自体の椅子が少ないです。つまり転職の成功率自体が低くなります。
一方で、管理職ポストの人材不足に悩んでいるのは多くが中小ベンチャー企業です。若い会社ほど40代以上で経験と知見のあるベテラン人材を欲しているので、40代〜50代人材のニーズが高まります。
さらに言うと、大手企業出身者はニーズが高いです。中小ベンチャーは大手のノウハウや知見が欲しいからです。そのため、大手でマネジメント経験のあるベテランであれば、中小ベンチャーに今より高いポストで転職できる可能性も高く、元の職場より給料アップも望めます。
将来性のある業界へ転職する
社員に高い給料を支払うには、会社自体が儲かっていることが絶対条件です。もう少し広く捉えると「儲かっている業界」へ転職することがとても大事になります。
お金稼ぎというのは、個人のスキルの多寡よりも「お金が流れる場所」に立っている方が大事です。釣りと同じで、釣り自体のスキルよりも「どこで釣るか(魚が多い場所で釣ること)」で成果は大きく変わるわけです。
では、今の時代に儲かっている業界=将来性のある業界はどこか?というと……
一番はIT・デジタル技術の業界です。
いま私たちは、人類史上最大と言われる「IT革命」のど真ん中に生きています。この20年近くで世界の時価総額トップ企業は製造業からIT企業(Apple、Google、Amazonなど)に総入れ替えとなり、この20年で私たちの生活はITによって激変しました。
国内でも深刻なIT人材不足が問題視されており、転職市場でも最もニーズが高いのはエンジニア人材です。
そのため、将来性という点で見ると、ITサービスを展開するIT企業か、あるいはデジタル製品・デジタル技術を領域とするメーカー(電気・機械)業界が有力となります(実際に40代の転職先業界としてもツートップ。職種はエンジニアと営業)。
その証拠に、前述で出した「ミドル転職で年収が上がる/下がる業界・職種」のデータをもう一度見ても
年収下がる人に比べて上がる人が圧倒的に多いのが「IT・WEB・通信系」となっています。
IT業界への転職は、IT領域に強い転職エージェントを使うのが有効です。以下を参考にしてください。
IT転職で利用すべきサービス
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リクナビNEXT
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リクルートエージェント
(業界最大手)
転職サービスの最大手で求人数が圧倒的に多い。総合型エージェントとして最初に必ず登録しておくべき2つ。リクナビNEXTで案件を探して、リクルートエージェントに相談に持っておくのが○ -
WORKPORT(ワークポート)
(IT総合)
IT専門エージェントとして10年以上の歴史がある大手。未経験もOK。ITの中でもエンジニアから企画、営業まで総合職種に幅広い求人あり。非公開求人も多い。現在はITのみでなく総合型に拡大。
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レバテックキャリア
(エンジニア向け)
男性エンジニア・クリエイター向けの特化型エージェント。業務経験ありの人向け。男性エンジニアの転職率が非常に高い。非公開求人多い。
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GEEKLY(ギークリー)
(ソーシャルゲーム)
IT・WEBやソーシャルゲーム業界に強い特化型エージェント。エンジニア・クリエイターの割合多め。非公開求人も多い。ゲーム業界を視野に入れるなら登録必須。
日系企業から外資系企業へ転職する
一般的には、日系企業より外資系企業の方が年収が高いケースが多いので、外資に転職することで年収アップする人が多くいます。なので、同業の外資に転職するのも一つの手でしょう。
しかし外資系は日系企業より成果至上主義です。年収が高い分、それに見合った働きができないとクビになりやすい世界でもあります。
こだわりの数を捨てる
40代〜50代の転職ともなると、もはや全ての希望条件を満たすような転職は非常に難しいです。「こだわりの数」と転職成功率は反比例すると思っていいでしょう。
「年収」を優先するのであれば、「業界」「会社の規模」「エリア」「職種」「役職」など他の条件は(ある程度)捨てる必要が出てきます。
ここで年収も望む上に、「自宅から1時間以内じゃなきゃ嫌だ」とか「大手じゃなきゃ嫌だ」とか言っていると、自己評価高すぎオジさんと見なされて相手にされません。
40代・50代の転職は「転職エージェント」の力を借りよう
いくらミドル・シニアの転職市場が盛んになってきたとはいえ、40代〜50代の転職は、20代30代の転職と比べると難易度は上がります。単純にニーズの比が全く違うからです。
大前提ですが、ミドル以上の人材はすべての企業で求められているわけではありません。なので、40代50代で転職を成功させるには、まず「40代50代の人材を欲している企業」を見つけて狙いを定める必要があります。
どうやってそれを判断するかと言うと、転職エージェントをうまく活用するのがいいでしょう。
転職エージェントは転職市場のプロなので、どの企業がどういう人材を欲しているかという情報を把握しています。なのでエージェントに相談した時点で、40代50代の人材を募集している企業を迅速にピックアップしてくれます。
利用すべき転職サイト/エージェント