近年、40代〜50代の社員に向けた「早期退職支援(優遇)制度」を設ける企業が増えています。退職金を割り増しするから早期退職しない? というシステムですね。
一見すると早期退職制度は、経営陣からのやんわりとした”リストラさせてほしい宣言”でありネガティブイメージを持つ人も多いです。
でも一方で、早期退職制度を「逃げ切り切符」としてうまく活用している人もいます。
50歳くらいで第一線からは早期退職して割り増し退職金でまとまったキャッシュを確保しつつ、その後は年収減でもスローペースで働けるホワイト企業に再就職したりして定年まで悠々自適な第二の人生を過ごす……といった感じでしょうか。
2018年〜2019年にかけて早期退職募集を行う企業は増えており、フジテレビや毎日新聞といったマスコミ、富士通やカシオといったメーカー、大正製薬やエーザイといった製薬会社まで、これまで磐石と言われた大手企業も多くがリストラに踏み切っています(詳しくは下記記事参照)
このように、今後より多くの企業が40代〜50代の社員を対象に早期退職者を募りはじめる可能性があります。
そこでこの記事では、早期退職制度を利用した人のその後と、再就職活動で50代人材が気をつけるべきポイントなどをまとめていこうと思います。
早期退職制度を利用して退職した人の「その後」
実質的なリストラ(強制)を抜きにすると、早期退職を希望する人は大体以下の2パターンであることが多いです。
- 親の介護や自信の体調などやむを得ない事情により
- 仕事人生に疲れたのでセミリタイアしたい(ゆるい仕事への再就職含む)
両親の介護に専念するために早期退職する人は多い
まず結構多いのが親の介護です。
50代になると両親が要介護な年齢になってくる人が多いでしょう。老人介護ホームに入れようにもお金がかかったり定員があったりするので、自宅介護を余儀なくされるケースも多い。
そうなると、仕事との両立がなかなか難しいので早期退職して介護に比重を置くという選択を取るわけですね。これは致し方ありません。
仕事人生に疲れたからセミリタイアしたい人が王道
最も多いのは、「今の仕事に疲れたよ……」というタイプの人ですね。とくに早期退職制度は大企業に多く、50代ならそれなりに責任のあるポストに付いている人も多いでしょうから、今日までに溜めてきたストレスは相当なはずです。
「もう第一線からは退いて、定年までの残りはゆったりと働いて過ごしたい……」
そんな人にとって早期退職制度は「逃げ切り切符」にもなり得ます。
ある程度ガッツリと退職金が貰えるのでそれを老後資金として貯蓄しつつ、定年までの残りはホワイトまったり企業に再就職してゆるりと仕事しつつ、空いた時間で趣味に没頭する……などなど。
今まで仕事一辺倒だったワークライフバランスを見直して、人生をリフレッシュさせる良いタイミングです。
趣味やスポーツを始めてみるのも良いですよね。私はジムに通っていますが、いまの一般的なジムって50代以上の高齢者が本当に多いんですよ。
私がプールで親しくなった50代の男性は、4年前に水泳を始めてから見事にハマり、今ではシニア大会に出るほどの熱中ぶりです。早期退職後に契約社員で再就職して仕事はセーブしているようで、水泳を始め仕事以外のことを楽しんでいるようです、
こういう例を見ると、セミリタイア的に早期退職し、その後に趣味なんかを見つけて思いっきり楽しむ人生も良いよな〜と憧れますよね。
仕事を完全に辞めてしまうのは危険である可能性も
早期退職後はスローで働ける仕事を確保しておくと安心。
仕事を完全にリタイアすると後々ジリ貧になって苦しむケースが多いので注意が必要です。
リタイア後に調子に乗って旅行しまくっていたら、老後貯蓄用の資金まで使い果たしてしまった……なんて典型的な例です。
何事もワークライフバランスが大事で、ワーク(仕事)の方はゆるい職場やパート・フリーランスの仕事なんかに再就職してセーブし、増えた余暇をライフ(趣味)に充てるというのが王道です。
基本的には、スローペースで働ける職場に再就職するのが一般的ですね。今は売り手市場かつ、上記で述べたように40代50代も過去に比べて圧倒的に転職しやすい市場になっているので、早期退職希望者には追い風になっています。
とはいえ、されど50代です。20代や30代の転職とは事情が全く違うことは当然です。
40代/50代のミドル〜シニア転職が活発化している
幸いにも近年はミドル〜シニア人材の転職市場が活発化していて、40代〜50代の転職(再就職)には追い風が増えています。
いくつか実情が分かるデータを見てみましょう。
下記は転職支援サービス「 doda(デューダ) 」より、転職成功者の年齢別の割合を示したグラフです。
https://doda.jp/guide/ranking/068.html
35歳以上は黄色の線です。ご覧の通り、成功割合的には25〜34歳以下には劣るものの、割合自体は2010年以降で唯一2倍以上に伸びています。30〜34歳の割合に僅差に迫る勢いですね。
記事によると背景にあるポイントは4つ。
成長企業の業務拡大・グローバル化による「即戦力人材」のニーズが向上
景気回復に伴う売り手市場により、人材不足の企業が採用年齢を上げざるを得ない状況
大企業の早期退職支援および実質的なリストラにより、中高年社員の流動性が高まっている
転職市場全体の高齢化
売り手市場の景気と、社会全体の高齢化がミドル〜シニア世代の転職市場の流動性を高めていることが言えますね。
このように、40代50代で早期退職しても再就職先を見つけやすくなっています。なので完全に仕事を辞めてしまうよりは、ゆるく働ける職場に移ってライフ・ワーク・バランスをうまい具合に調整する方が良いと思いますね。
ただし、早期退職したシニア人材が再就職する際には、30代40代の現役バリバリ世代と同じノリで就活に挑むと失敗するケースが多々あります。
次項では、そんな50代セミリタイア世代が再就職を探すときのポイントを書いていきましょう。
早期退職した50代が、次の再就職先を見つける際の転職活動のポイントや注意点
【1】高望みしないこと。年収が大幅に下がるのは当たり前
40代や50代の転職市場というのは、管理職や役員ポスト向けの「エグゼクティブ採用」か、業務難易度の低く給料水準も低い職種かで2極化しています。さらなる高みを目指すハイキャリアアップ組か、年収落として再就職セミリタイア組かで分かれる感じです。
早期退職組でエグゼクティブ採用を狙う人は少ないと思うので、多くの人は年収を落としてライトに働ける職場への再就職を模索することになります。
ただ、50代にもなると一般的に給料水準が一番高いゾーンなので、年収が大幅に落ちることが受け入れられない人が非常に多い。
管理職ポストでもないヒラの50代社員を採用するとなると、年収400万でも良い方、契約社員で年収300〜350万程度まで落ちることもザラです。50代でヒラの新入社員は企業側も一番「使いづらい」人材ですからね。
今まで上場企業で年収800〜1000万貰っていたようなバブル世代の50代からすれば、年収300万なんて受け入れられない気持ちは分かります。……が、特別実績などがなく、「俺は上場企業で課長/部長をしていたんだぞ!」くらいしかアイデンティティがない50代だと、一歩会社の外に出れば市場価値はそんなものです。
悪く言えば、プライドばかり高い上場企業のおじさん社員ほど、自分の市場価値を盛大に見誤っている人がめちゃくちゃ多いです。往々にして価値は会社の看板に付いているのであって、あなた自身に付いているわけではない……という現実を分かっていないのです。
だからといって、下手に自分の市場価値を低く見積もる必要もありません。
なので、転職活動に際しては必ず転職エージェントに自分の市場価値を試算してもらうこと。自分の年齢+経歴でどの程度のレベルの企業に入り込めそうなのか、自分の主観で判断せず、必ずプロに判断してもらってください。
下手に高望みした企業ばかり受けて落ちまくっていると、その間にブランク期間がどんどん開いて余計に採用されづらくなります。まずは、次で解説するように転職エージェントに診断してもらいましょう。
【2】転職サイト/転職エージェントをしっかり活用する
コネがない場合は一般転職するわけですが、必ず転職サイトや転職エージェントを利用しましょう。何度も言うように、50代バブル世代は自分の市場価値を過大評価しすぎているケースが多いからです。
転職のプロに診断してもらえば、現実的な自分の今の市場価値がわかるでしょう。
まず一般的な転職サイトである「 リクナビNEXT 」に登録し、スカウト登録しておき、自分でも試しに希望条件で求人検索してみてください。ほとんど該当条件でヒットしない/スカウトオファーも届かないようなら、自分が高望みしすぎている証拠です。
その場合は、転職エージェントにてプロのコンサルタントに自分の市場価値を見てもらってください。
転職エージェントは最大手の「 リクルートエージェント 」でも良いですが、リクルートはやや若手人材のイメージがあるので、次点の「 doda(デューダ) 」か「 パソナキャリア 」も使っておくべきです。
とくにパソナは自社でも定年退職したシニア人材の雇用を推進しているので、シニア人材に強い味方であると言えます。
転職エージェントはなるべく複数社の声をもらった方がいいので、3〜4社くらいは使って幅広くアドバイスを貰っておきましょう(エージェントは無料で使えます)。
再就職で使うべき転職サイト/エージェント
【3】面接では偉そうな態度・上から目線を出さないように
私は以前に採用担当をしていたので50代人材も何人も面接したことがあるのですが、正直に言うと、上から目線な態度が見え隠れする人は本当に多いです。
気持ちはわかるんです。一部上場企業で課長や部長をやっていた人が、中小企業で一回りも年下の人間に面接されているわけですから、ついつい自らを強く見せたくなるのは人間の性でもあります。
……ですが、そうした態度が見えた瞬間に確実に落とされます。絶対です。
なぜって、そんな態度が見え隠れする人を採用したら、社内の人間関係がギクシャクするのが目に見えているからです。エグゼクティブ採用でもない限り、わざわざ50代の人材を取らなきゃいけない理由は企業にありません。同じ給料で扱いづらいおじさんを取るなら、同じ給料で従順な若い人材をとります。当たり前です。
こうした理由もあり、大企業から中小企業への転職は意外なほどうまくいかないケースが多いです。上場企業から中小企業へ転職する際には下記記事も参考にしてください。
まとめ
早期退職優遇制度は、上手く活用すれば第二の人生に移行するための切符になります。ちょっと早めに第一線の戦場を降りて、スローペースな人生を歩み始めるのは何もネガティブなことではありません。
もちろん老後資金の問題もあるので、ある程度はしっかり計画的に行う必要があります。退職金を含めた貯蓄の計算、そして再就職先の確保です。
ミドル〜シニア層の転職は以前に比べて格段に開かれはじめていますが、それでも20代30代の人材と同じわけではなく、年齢の面だけでも一定のハンデを背負っているのは変わりません。
転職サイトや転職エージェントのアドバイスを受けながら、50代セミリタイアを目指す企業選び、転職活動に励みましょう。
再就職で使うべき転職サイト/エージェント