松田公太(まつだ こうた)/1968年12月3日生まれ
photo by : http://www.uchida-seni.com/
コーヒーチェーンとして、今やスタバに並ぶ勢力と人気を誇っている『TURRY’s COFFEE(タリーズコーヒー)』。
1992年にアメリカで開業され、全米でスタバに次ぐ2位の売上を上げているタリーズコーヒーですが、日本での展開では、米タリーズからライセンス権を買い取った別法人が運営をしています。
米タリーズからライセンスを買い取り、銀座に1号店を開いてタリーズを日本に広めたのは、当時28歳の松田公太さん。
なんと、飲食経験は学生時代のアルバイトのみ、しかも職歴は元銀行員という異色の起業でした。
『食を通じて文化の架け橋になりたい』という想いのもと、スペシャルティコーヒー事業を手がけるに至った経緯をまとめてみました。
食文化に興味を持ったきっかけは海外生活
少年期の松田さんは、父親の仕事の関係で、5歳から7歳までをセネガルで、10歳から高校卒業までをアメリカの地で過ごしました。
海外生活では、人種や文化の違いについては比較的すんなりと馴染めたそうですが、最もカルチャーショックを受けたのが「食」だったと言います。
日本では贅沢食材とされるウニが、アフリカ人から見たら『ゲテモノ』にしか見えないという事実に驚き、 また、当時のアメリカの友人には、Raw Fish(刺身や寿司などの生魚)も「気持ち悪い」として絶対に受け入れてもらえない事実に愕然。
それはちょっぴり悲しかった反面、寿司のおいしさを伝えることが出来れば日本への架け橋になるーーとも感じ、「全米で展開する寿司チェーンを作ってやろう!」と夢見たのが、食文化というものに興味を持つきっかけとなりました。
起業を意識するようになったきっかけ
もう1つ、起業を意識するようになったきっかけは、当時のアメリカ人による日本人軽視の傾向でした。
当時の現地メディア(『LIFE』や『TIME』)などで、日本人がどのように紹介されていたかと言うと、
みんな分厚い黒メガネで、首からカメラをさげて、なぜか出っ歯……算数は得意だけど、スポーツはできない……いわゆるエコノミックアニマル、イエロー モンキー……。日本と日本人が軽視されているわけです。
このことに悔しさを覚えた松田さんは、いつか 日本“発”で、“初”のインターナショナルチェーンをつくって日本の食文化を世界に広め、日本の素晴らしさを知ってもらおう、という挑戦の意志が芽生えました。
また、アメリカの企業風土には、日本とは全く違って起業文化があります。 友人の父親が独立起業して成功していく様子を目の当たりにした松田さんは、起業という道は、頑張った分だけ得るものがあるということを知りました。
もし自分が日本で育っていたら、事業を起こそうなんて考えは持たなかったかもしれない、と語っています。
帰国後は大学を経て、銀行へ就職。そしてコーヒーとの出会い。
高校を卒業後に日本へ帰国し、筑波大学に入学した松田さんは、4年間アメフトに精を出しました。
その後は三和銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行し、銀行マンとして働き始めます。
そして、この行員時代に松田さんは『スペシャルティコーヒー』の文化に出会います。
それは、高校の友人の結婚式に出席するためにボストンを訪れたときのことでした。
そのときたまたま飲んだスペシャルティコーヒーの味に、松田さんは強烈な感動を覚えました。 (『スペシャルティコーヒー』の定義は曖昧なようですが、ここでは「高級・高品質な贅沢コーヒー」くらいの意味に捉えて下さい)
それまではコーヒーよりもむしろ紅茶の方が好きだった松田さんですが、帰国したあともその味が忘れられないほど衝撃だったそうで、そのコーヒーを求めて再び渡米します。
今度は、コーヒーの本場アメリカで実に50店舗以上を回って「飲みくらべ」するほどの夢中ぶりでした。
そして、50店舗以上を回って、その中で最も美味しいと感じたのがタリーズだったのです。
タリーズ本社へ無謀なラブコール
本場アメリカでタリーズコーヒーの味に惚れ込んだ松田さんは、いきなり「タリーズを日本で出店させてほしい!」と出店計画をレポートにして米タリーズ本社にメールを送りつけます。
しかし、当然ながら本社からは何の返事もなく……。
それでも諦めきれない松田さんは、なんと直接電話で突撃します。
すると非常に幸運なことに、タリーズ代表のトム・オキーフ氏が来日し、東京の帝国ホテルに宿泊しているとの情報を知らされます。
これを聞いた松田さんは、類いまれな行動力でオキーフ氏のもとに突撃訪問します。
するとこれまた信じられないことに、オキーフ氏が松田さんの話を聞くために時間を割いてくれたのです。
帝国ホテルの地下にある寿司屋でオキーフ氏と面会した松田さんは、練りに練ってきたという日本出店計画を2時間あまりに渡ってプレゼンしました。
この突撃訪問が功を奏し、その後数回の交渉を経て、松田さんはなんと日本で1年間のタリーズ独占契約権を獲得してみせたのです。
銀座のど真ん中にタリーズ1号店をオープン
タリーズのライセンス契約獲得に成功した松田さんは、銀行を辞め、「日本版タリーズ」で起業の道を歩むことを決断しました。
それからは、記念すべき1号店を開店させるために、物件探しと資金集めに奔走します。
資金に関しては、親族、友人、知人から3500万円をかき集め、国民生活金融公庫からも3500万 円の借り入れに成功し、計7000万円の資金調達を実現しました。
最悪 事業がダメになったとしても、コンビニで1日10時間35年間働けば借金は返せると計算していましたから(苦笑)。
物件探しの方も非常に苦労したそうですが、最終的には縁あって東京・銀座4丁目のビル1階と地下1階の元喫茶店の物件を奇跡的に押さえることができました。
こうして1997年8月、銀座のど真ん中に、タリーズ日本1号店は開店することになりました。
松田さんは運営会社として「タリーズコーヒージャパン株式会社」を設立し、代表取締役社長に就任しました。
飲食業界史上最速で株式上場
高校時代からの情熱を原動力にタリーズの日本展開を実現させた松田さんは、その後も留まることを知らぬ勢いで急速に成長・拡大していきました。
そして2001年、(当時)飲食業界では史上最速で、ナスダックジャパン(現ヘラクレス)に株式を上場させます。(現在はいろいろあって上場廃止しています)
その後2005年には、 日本における「Tully’s」商標権を完全取得し、 全国に約300店舗、フェロー(従業員)も社員で350名、アルバイトで約4000名を抱える一大コーヒーチェーン店に育て上げました。
ちなみに、松田さんは2010年に、今度はハワイの人気店Eggs’n Thingsの世界での展開権を取得し、日本1号店を東京・原宿にオープンさせました。(公式サイトはこちら)
“All Day Breakfast”をコンセプトに、昼夜問わず美昧しくてボリューム感のある朝食メニューを楽しめる店として人気を博し、現在のパンケーキブームの火付け役にもなりました。
まとめ
松田さんは2007年にタリーズコーヒージャパンの社長を退任し、2010年に「みんなの党」の公認候補として政界の道に進出しました。
2015年現在はアントニオ猪木氏らと共に、政党「日本を元気にする会」を結党し、代表と党幹事長に就任していますが、政治家としての活動はここでは割愛させていただきます。
松田さんの情熱と行動力により、本場アメリカと同じように、日本においてもタリーズは王者スターバックスとのデッドヒートを繰り広げるようになりました。 (『スタバ VS タリーズ』についてはこちらが参考になります)
ちなみに、インパクトを残すためにストローの色を緑にしたのはタリーズが先で、スタバが速攻パクっという話も……。
何はともあれ、両雄が競争し合い、切磋琢磨しながらコーヒーチェーン界をより良くしていくのは喜ばしい限りですが、 どうか私の一番好きなドトールのことも忘れないであげて下さい。。。
【おまけ診断テスト】自分の「才能」に気づいていますか?
仕事ができるビジネスマンと出来ないビジネスマンの差は、意外と「自分の才能・資質を知っているかどうか」だけの差だったりします。
仕事ができる人ほど「自分が得意なこと」を仕事にし、仕事ができない人ほど「自分が好きなこと」を仕事にしようとします。
仕事が非常にできる2割の人間は、自分が得意なことを仕事にしている人。
仕事を普通にこなす6割の人間は、自分が得意なことを仕事にしていない人。
仕事ができない2割の人間は、自分が苦手なことを仕事にしている人。
「好きなこと」と「得意なこと」は違います。残酷なほど違います。一流と三流を分ける海より深い隔たりがあります。
世界最高のサッカー選手であるリオネル・メッシは、FW(フォワード)というゴール前20m四方のエリア内でのみ世界最高の選手でいられます。彼は誰よりもディフェンスをしません。なぜか? その仕事場以外では平凡な選手だからです。
つまり「仕事ができる人間」とは、「得意な場所で、得意な仕事をしている人」なのです。
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