佐藤航陽(さとう かつあき)/1986年生まれ
『株式会社メタップス』というベンチャー企業をご存知でしょうか?
「世界の頭脳へ」という壮大なテーマを掲げ、人工知能を活用したアプリマネタイズプラットフォーム『metaps(メタップス)』、銀行を脅かすサービスとして話題になっているオンライン決済サービス『SPIKE(スパイク)』を主力事業とし、 日本市場ではなくシンガポールに拠点を置いて、アジア全域を抑えにかかっているという、ベンチャー企業としてはズバ抜けた存在感を放っています。
さらに、まだ創業10年に満たないながら、米ベンチャーキャピタルから50億円以上の巨額な資金調達に成功したことも大きな話題となっていますが、 そんな「世界視野」のベンチャーを率いているCEO・佐藤航陽さんはなんとまだ20代というから驚きです(2015年時点で29歳)。
早稲田大学をたった1年で中退し、若干20歳にして起業の道へ突き進んだ佐藤さん。
資金150万円で始めたビジネスを、どのようにして世界で戦うビジネスへ急成長させたのか、佐藤さんの経歴をまとめてみます。
高校時代には本格的に商売をスタート
福島県の母子家庭に生まれ、あまり裕福ではない環境で育った少年時代。 母親も毎日働きにでていたので、「何をするのも自由だが、全ての結果は自己責任」というルールで育てられてきました。
責任さえとれば何をしてもいいという家庭ルールがあったので、佐藤さんは中学校に上がった頃には、自分で”商売をして”、お小遣いを稼ぐようになったそうです。
その年頃のゲームや小物を友達の間で買ったり売ったりして、日銭を貯めていたのだとか。
そんな”商売ごっこ”は、高校へ入るとさらに本格化します。
母親がデザインの仕事をしていて、それを手伝っていたこともある佐藤さんは、自分でデザインして服や靴を作り、それを売ったりしていたと言います。
その他にも、屋台を出したり露天商をしたりと、部活にも入らずに商売にのめり込む高校生活を送っていました。
この時点で10代にしては大金を稼いでいたそう。
弁護士を目指して大学に入るも挫折……
大学は早稲田大学の法学部へ進学した佐藤さん。この頃は弁護士か政治家になろうと考えていました。
しかし、学費も全て自分で捻出しなければならなかった佐藤さんは、早稲田大学のバカ高い入学金によって、高校時代の商売で貯めた貯金が半分以上消し飛ばされてしまいました……。
この時点で、手元に残ったお金はわずか150万。 大学の授業料と生活費を冷静に考えると、長くても大学2年までしか金がもたないという事実が、入学した瞬間に判明してしまいました。
この事実に悩んだ佐藤さんは、「超勉強して2年以内に司法試験に合格すれば、卒業しなくていいのでは?」と短絡的に考え、実際に3ヶ月ほど猛勉強してみたそうですが、当時の司法試験は合格率がわずか3%という超難関。
「これは無理だ……」とすぐに悟った佐藤さんは、弁護士の道を諦め、慣れ親しんだビジネスの道へ進むことを決めます。
1年で中退し、150万を使って起業
進路を起業一本に絞った佐藤さん。当初は、得意だったデザイン系やアパレルでの起業も考えていましたが、そこで稼げていたのは高校時代の地元ネットワークがあったからこそ。しかもアパレル関係は初期費用が高くつくという問題点もありました。
そこで佐藤さんが選択したのがITの分野です。小資本で始められ、短期間でレバレッジを効かせることができ、かつ将来的にグローバルに戦える分野はITしかありませんでした。
といっても、その時点ではパソコンメールすら出来ないほどのITスキルだったという佐藤さん。プログラミングが得意だった友人と一緒に秋葉原にパソコンを買いにいき、教えてもらいながら3ヶ月ほどでHP制作とプログラミングの基礎を覚えました。
その後、早稲田大学をたった1年で中退し、2007年、20歳にして「イーファクター株式会社」(現・メタップス)を設立します。
四苦八苦が続いた起業当初
イーファクターを設立し、最初に打ち出したのは、今でいうSNSのようなウェブサービスで、記事を時間軸で見せる視覚的な表示方法が特徴でした。
これが反響を呼び、ベンチャーキャピタルから1000万円の投資を受けることは出来たのですが……、仕組みは評価されるものの、売上はなかなか上がりませんでした。
売上が立たないため、経営を維持するために四苦八苦する毎日が続き、1日に多い時は300件以上の営業電話をかけてサイト制作やマーケティング代行の受託仕事をこなしていました。
ここでスゴいのは、当時まだ佐藤さんは完璧にプログラミングをこなせるわけではなかったにも関わらず、「大丈夫です。出来ます」と言って仕事を獲得し、契約書をもらってから本屋に行って学習を始めていたのだとか(笑)。その強引さと度胸も一流です。
その後、徐々に蓄積したWebマーケティングのノウハウを体系化したコンサルティングをスタートさせ、また、自社サイトとしてクーポンサイトを立ち上げてショップなどのマーケティングも手がけはじめ、売り上げは右肩上がりに。
起業して3年後の2010年には黒字化に成功し、数億円の年商をあげられるまでに成長しました。
日本発ではなく、アジアから世界を視野へ
事業がようやく軌道に乗ったところで、さらに視野を広げようと、シンガポールやニューヨーク、シリコンバレーなどを視察して周り、経営者をはじめとする沢山の人に話を聞きにいった佐藤さん。
約1年間に渡って世界各地を周っていくうち、スマートフォンの市場にこそ10年に一度の価値があると気づきました。
そこでスマートフォン市場にフォーカスして様々なリサーチをしてみると、世界共通のある”問題点”が浮上してきました。 それは、”アプリ開発者のマネタイズの難しさ”、です。
スマホ端末は加速度的に普及すれど、アプリ開発者はなかなか儲からない…… その問題点に気づいた佐藤さんは、そのアンバランスな環境を改善するためのネットワーク構築するというビジネスモデルを作ります。
スマホ向けリワード広告ネットワーク「metaps」
これはリワード広告(成功報酬型広告の一種で、アプリやwebサイトにアクセスしたユーザーに対して金銭やポイントなどのなんらかの形で報酬の一部を還元する仕組みを持った広告)でアプリのマネタイズを図るサービスで、 「ユーザーはいるけど利益がでない」という無料アプリに対して広告を出稿し、その広告をダウンロードしたユーザーはアプリ内のアイテムなどを利用できる仕組みです。
ユーザーにも広告をダウンロードするメリットが存在するというWin-Winのシステムです。
さらに、人工知能によるアプリの収益化のプラットフォームを提供していて、広告の効果や、ユーザーの行動分析も行っています。
大手のソーシャルゲーム企業がビッグデータを解析してユーザーの行動心理分析をしているのに対して、メタップスでは人工知能を駆使しているわけです。まさに世界の頭脳派です。
ーーーと、この「metaps」に全てを賭して勝負をかけるべく、佐藤さんは既存の事業を全て売却して資金を作り、 2011年、社名を「株式会社メタップス」へ変更してシンガポールに拠点を構え、全財産を投じて「metaps」のサービスを開始しました。
シンガポールを拠点にアジア市場を抑える
スタートの場を日本ではなくシンガポールにした理由は、当時シンガポール内でのスマホシェア率が70%を越えていたこと、そしてマレーシア・インドネシア・タイ・インドなど、アジア諸国への展開もしやすいという点です。
「世界の市場を抑えるためには、日本からではなくアジアから仕掛けなくてはならない」と佐藤さんは言います。
その戦略性にはグーグルやフェイスブックに近いものがあり、シンガポールを中心にまずアジア諸国を抑え、日本を抑え、中国を抑え、と繰り返すことでネットワークを拡大し、最後は北米で大勝負をかけることになると未来図を描いています。
オンライン決済サービス「SPIKE」でさらなる話題に
「metaps」だけでも充分すぎる勢いのあるメタップスですが、 2015年2月に米投資ファンドから50億円を越える(スタートアップとしてはぶっきりナンバーワンの)資金調達を成功させ、 ウェブサイトにリンクを設置するだけで利用できるというオンライン決済サービス「SPIKE(スパイク)」のサービスを開始したことで大きな話題を呼んでいます。
この新サービス、決済手数料が業界最安の2.55%という点も素晴らしいところですが、 何より注目すべき点は、決済サービスのみではなく、「SPIKEコイン」なる電子マネーを提供しているところです。
このSPIKEコインの最もスゴいところは、年率1%の還元です。
つまり、SPIKEコインを持っているだけで、1年間で1%ずつお金が増えていくことになります。これ、金融機関としては破格の数字です。
単純な数字だけを見れば、銀行に預金する方が遥かに損になってしまうほどの威力で、もしこんなものが真面目に普及したら世の銀行員は顎が外れかねません。
「そもそもSPIKE自体、決済だけをやりたかったのではない。金融のシステムを作りたかった」
と語っている佐藤さん。やはり本来の目的はこのSPIKEコインによって、”お金の在り方そのもの”をテクノロジーによって進化させたいという壮大な構想があるよう。(もはや普通のベンチャー起業家とは見ている世界が違うようです……)
今後、SPIKEコインを取り扱う加盟店をどれだけ増やせるかが、メタップスの大きな勝負所になりそうです。
まとめ
以前、テレビで「日本からはなぜシリコンバレーのような世界的起業家が育たないのか?」という討論番組で、元ライブドアの堀江貴文さんが日本人起業家の傾向についてこんな意見を言っていました。
「日本というマーケットがすでに十分すぎるほど大きいため、わざわざ世界に行こうと思わない」
一般的に起業の原動力となる「自己実現欲」であったり「金銭欲」というものは、日本国内で成功するだけ十分すぎるほど満たせるのだそうで、シリコンバレーの起業家のように「この技術(サービス)で世界を変えたい!」という根源的な強い信念を持った人でないと、わざわざ国外へは目が向かないのだとか。(日本はただでさえ閉鎖的な島国ですしね)
その点からみると、佐藤さんは明らかにシリコンバレー型の起業家だと言えそうです。サービスを発案する際に、日本市場を前提とするのではなく、ハナから世界で展開することを想定しています。
そして、2015年7月にはとうとうマザーズへ上場を果たしたメタップス。
440万株を保有する創業者の佐藤さんの資産額は約145億円に上ります。
こうして見てみると、手腕も資産もスケールも、やはり若手起業家の中では頭三つ四つ抜きん出た存在だと言えそうです。
【おまけ診断テスト】自分の「才能」に気づいていますか?
仕事ができるビジネスマンと出来ないビジネスマンの差は、意外と「自分の才能・資質を知っているかどうか」だけの差だったりします。
仕事ができる人ほど「自分が得意なこと」を仕事にし、仕事ができない人ほど「自分が好きなこと」を仕事にしようとします。
仕事が非常にできる2割の人間は、自分が得意なことを仕事にしている人。
仕事を普通にこなす6割の人間は、自分が得意なことを仕事にしていない人。
仕事ができない2割の人間は、自分が苦手なことを仕事にしている人。
「好きなこと」と「得意なこと」は違います。残酷なほど違います。一流と三流を分ける海より深い隔たりがあります。
世界最高のサッカー選手であるリオネル・メッシは、FW(フォワード)というゴール前20m四方のエリア内でのみ世界最高の選手でいられます。彼は誰よりもディフェンスをしません。なぜか? その仕事場以外では平凡な選手だからです。
つまり「仕事ができる人間」とは、「得意な場所で、得意な仕事をしている人」なのです。
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