ここ1ヶ月近くに渡り、BTCを始め仮想通貨市場全体の下落傾向が続いていますが、その大きな要因の一つとして最近取り沙汰されているのが「テザー問題」です。
これはUSD(アメリカドル)とのペッグ通貨である「テザー(単位USDT)」に対する”ある疑惑”の問題で、現在CFTC(米国商品先物取引委員会)が発行会社に対して調査を行なっている最中です。
専門家によると、もし仮にテザー疑惑がクロだと判明すれば、BTC価格は30%〜80%近く暴落し仮想通貨市場は崩壊するという見解もあり、”事態の大きさ”がうかがえます。
この一大事である「テザー問題」について、正直よく分かっていない人が多いと思うので、なるべく分かりやすく解説していきます。
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仮想通貨テザー(USDT)とは何なの?

ほりっく
テザー疑惑を語るには、まず「テザー」という仮想通貨の意味と存在意義を理解しておく必要があります。その基本知識について先に書いておきます。
テザーはドルと連動した仮想通貨

「Tether(テザー)」という仮想通貨があります。通貨単位は「USDT」です。
テザーの特徴は、1USDT=1USD(米ドル)で価格レートが保たれていること。簡単に言えば、ドルの仮想通貨バージョンというイメージです。
同名のテザー社が発行管理しており、1ドルで1USDTを買う……といった換金の仕組みです。そして換金したUSDTで色々な仮想通貨を買うという流れ。
こうした、法定通貨(ドルや円など)と同価値を持つよう設計された仮想通貨を「ペッグ通貨」と呼びます。なのでテザーは”ドルのペッグ通貨”となります。
テザーは日本の取引所では馴染みがないですが、海外取引所では大きな役割を担っている仮想通貨です。実際にコインマーケットキャップで取引ボリュームを見てみると↓

なんと、テザーはBTCに次いで2番目に取引高のある通貨であることが分かります。
記事執筆時点ですでに約20億USDT(=20億ドル相当)が発行・流通しており、市場で無視できない大きさになっているわけですね。
テザーはなぜ作られたの? 用途や目的は?

ほりっく
なんでドルと同じ価値の仮想通貨を作る必要があるの?
というと、海外ではドルと同じ価値を持つ仮想通貨(テザー)は非常に使い勝手がよく便利なのです。
法規制をかいくぐる目的
海外では銀行が仮想通貨に対して懐疑的な姿勢なので、法定通貨とビットコインの取引が非常に面倒だったり手間がかかります。銀行と取引してもらえない仮想通貨取引所もあります。
そうした時に、ドルと同じ価値を持つ「仮想通貨」を作ってしまえば、仮想通貨版ドル(=つまりテザー)で仮想通貨の売買取引が容易かつスピーディにできるようになります。
こうした目的でテザーは誕生しました。
とくにテザーの恩恵を受けているのは中国です。中国では強力な規制により仮想通貨取引所が閉鎖され、海外への送金や外貨両替にも厳しい規制が敷かれています。よって中国人は海外の取引所を使うしかないわけですが、いかんせん法定通貨(中国元)でビットコインも買おうとしても規制に引っかかる……。
この規制の抜け穴として、【中国元⇒ビットコインを買う】のではなく、
【中国元⇒ドル⇒テザーに換金⇒テザーでビットコインを買う】
というルートが使われているのです。
このおかげで中国でのテザー需要は非常に高いです。
利益確定の退避先として便利
また、利益確定するときにもテザーが活躍します。
利益が出たり、あるいは相場が暴落した時に保有コインを売却して資金を退避したいとしましょう。
この時に法定通貨(ドル)に利確してしまうと税金が発生します。しかし、法定通貨(ドル)と同じ価値を持つテザーに資金を退避させれば、ドルに利確したのと実質同じ状態でありつつ税金発生を逃れることができます。

ほりっく
※日本と違って、海外ではコイン同士のトレードには課税されないケースが多いです。
このように、テザー(USDT)は利確時の避難先としても非常に便利な存在なのです。
【本題】テザー疑惑とは? 問題が浮き彫りになった経緯
さてさて、テザーという通貨の立ち位置がわかったところで、ここからが本題のテザー疑惑についてです。
疑惑は大きく2つあります。罪状2つです。
テザー社に対する2つの疑惑
- テザーを勝手に大量発行してBTC相場を操縦した疑惑
- 大量発行したテザーの裏付け資産となるドルを保有していない疑惑
順を追って、事の経緯を見ていきましょう。
話は、昨年のBTC暴騰のときに遡ります。
異常だったビットコイン高騰は大量発行されたテザーが作り上げていた?
昨年、2017年の11月末〜12月中旬にかけて、BTCが100万円を突破し最高値230万円を付けるまでの大暴騰は記憶に新しいと思います。
今思えば、異常なまでの勢いでBTCは暴騰しました。
さて、下記はテザー(USDT)のここ1年間の発行推移です↓

ちょうどBTCと同じく、2017年11月の終わり頃から急激な勢いで発行されているのが分かります。
テザー疑惑を告発している匿名レポートによると、BTCチャートとテザー発行量の関係性を探った結果、BTCが下落→上昇に転じるタイミングで大量のテザーが発行されていた、と言うのです。
つまり、BTCが下落しようとするたび、大量に発行されたテザーがそれを買い支えて無理やり押し上げていた……だから、BTCはあんな異常な上昇を見せた……と言う意味です。
たった数日で1億ドル相当のテザーが発行されるなど、不自然なほど大量発行が観測されたため、

ほりっく
こんな量のテザーを誰が買ってんの?
もしかしてこれ、テザー社が自社でテザーを大量発行して自分たちでBTC買ってるんじゃね?
という疑惑が当時からモクモクと立ち上っていました。
テザーを自社の意思決定で発行できるテザー社は、いわば紙幣を発行している日銀のようなもの。そのテザー社が勝手にテザーを大量発行し、そのテザーでBTCを買い支えることで価格を釣り上げたのでは?
つまりテザー社は、テザーを勝手に大量発行することで
市場操縦をしていたんじゃないか?
ということ。
これが最初の疑惑です。
大手取引所「Bitfinex(ビットフィネックス)」とテザー社がグル?

香港に本社を置く「Bitfinex(ビットフィネックス)」という世界最大規模の仮想通貨取引所があります。テザーの取引量が多く、テザー人気を世界に広げた取引所とも言えます。
テザー疑惑を調査していた匿名レポートによると、
ビットコインが大きく価格上昇をさせたタイミングの約50%が、91回にわたる新規テザー発行直後2時間以内、Bitfinexのウォレットに着金した2時間後に起こっている……!!
というのです。
つまり、テザー社が大量の新規テザーを発行し、そのテザーを大手取引所Bitfinexに送金していた。そして、そのタイミングでBTCが高確率で上昇していた。これが偶然とは思えない。
ということは、テザー社から送金された大量テザーを使って、Bitfinexがレバレッジ取引を使ってBTC価格を押し上げていたんじゃないか?
てことは……
テザー社とBitfinex、グルじゃね?
(そして、BTC価格を吊り上げた裏でBitfinexが自社保有の大量のBTCを売っていたんじゃないか?)
そして調べてみると、なんとテザー社とBitfinexはCEOをはじめ経営陣が同じ人物ではありませんか!

ほりっく
同じ人たちが経営しているとか……これはもう怪しすぎる……
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大量発行したテザーと同量のドル持ってるの?

100歩譲って、テザー社およびBitfinex陣営が価格操縦していたのなら、彼らを逮捕して終了です。しかし、今回の問題はそれで収まるほどヤワな問題じゃなさそうなのです。
テザー疑惑のもう一つの問題は、
”大量発行しているテザー(USDT)と同量のドルを、テザー社は持ってないんじゃないか?”
というものです。
先述の通り、テザーは同量のドルと引き換えに発行されるもの。いま市場に20億USDTが発行されていれば、テザー社は20億ドル相当を保管していなければなりません。
正確には22.1億ドル、日本円で約2500億円近い現金を、果たしてテザー社は本当に保有しているのでしょうか? 2500億円なんて言ったら、コインチェックの460億がかすむレベルです。
もし、テザー社がドルを持っていないのに”架空のテザー”を大量発行していたら?
テザーは、同価値のドルが保管されているという「信用」の上に成り立っています。なのでもし、ドルの裏付けがないテザーが大量発行されていたとすれば、ドルの偽札が大量に刷られているようなものです。
疑惑は深まるばかり……

ほりっく
君たち、本当に22.1億USDTに相当するドルを持ってるんだろうな? 22.1億ドルだぞ?
という追及に対し、当然ながらテザー社側は「大丈夫。持ってる持ってる。本当にマジで信じてください」と返答しています。
しかし、22.1億ドルを保有している証明は今もできていません。
2017年の春には、台湾銀行とウェルズ・ファーゴという大手銀行2行がすでにテザー社との取引から手を引いています。さらに最近になって、監査法人とも契約解消していたことが発覚しました。
潔白を証言できる第三者がいない状況。
こうしてみると、かなり真っ黒にしか思えません。
しかも、テザー社は公式サイトで「テザーの現金化には応じない」と記載しており、不安に駆られた投資家たちが換金に走る事態にガードを用意していたとも勘ぐれます。
CFTC(米国商品先物取引委員会)がテザー社とBitfinexを召喚
このような数々の疑惑を受けて、CFTC(米国商品先物取引委員会)が昨年12月6日にテザー社とBitfinexに対して召喚状を送っています。
もちろん、テザー社の不正調査のためです。
この「CFTCがテザー社に召喚状を送っていた」という情報が世間に流れたのがつい先日だったため、2月4日からBTCは大きく下落し始めました。
さらに2月6日は、アメリカで開かれた公聴会でCFTC理事のJ・クリストファー・ジャンカルロ氏が証言をする予定だったため、ここでテザー疑惑について何か証言するんじゃないか?(調査の結果クロだったんじゃないか?)という不安が投資家に広がり、6日昼頃にかけてBTC価格は一時70万円を割る大幅下落を記録しました。
……が、結局、公聴会ではテザー疑惑については触れられませんでした。拍子抜けも拍子抜け。
一時の不安が解消されたためか、BTC価格は65万円を底にして現在(2月7日)は回復傾向にあります。
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テザー疑惑がクロだった場合、BTC価格(仮想通貨市場)はどうなるの?

テザー疑惑に白黒つくのはまだ時間がかかりそうですが、もし仮に疑惑がクロだった場合、BTCひいては仮想通貨市場はどうなってしまうのでしょうか?
これは実際に起こってみないと分かりませんが、有識者の見解を眺めてみると、
- BTCは80%下落してもおかしくない。市場は崩壊する!
- 正直そこまで市場に影響はでない。なぜ皆んなそんな怖がるの?
という悲観と楽観の両極端の見方があるようですね。
BTC暴落する悲観パターン
まず考えられるのが、投資家たちのパニック売り。
「テザー疑惑がクロなら崩壊する」と思っている投資家が多いほど、クロになった瞬間に一斉に売って逃げようとするので終了パターン。集団心理ですね。
もう一つが、取引所が潰れるパターン。
Bitfinexを含む少なくない数の取引所は、顧客の資産をドルではなくテザーで保管しているといいます。やはり流動性の面でドルと仮想通貨だとやりくりするコストが大きいのでしょう。
もしテザーの裏付けとなるドルが存在せず、支払い保証が不可能となれば取引所は破綻しかねません。コインチェックの数倍の規模を誇るBitfinexが倒産すれば、リーマンショックよろしく波及的に市場全体がドミノ倒しになり、結果的に市場壊滅状態になるかもしれません。
いずれにせよ、疑惑がクロだった場合は仮想通貨というマーケットに対する信用を大きく損なうので、機関投資家の参入が遠のくほか、個人投資家も多くが仮想通貨とは見切りをつけて去って行くでしょう。
そうなれば市場全体に大きな悪影響が出る……という見解。
BTC暴落の心配はない楽観パターン
一方で、ビットコイン基金の創設者チャーリー・シュレム氏はtwitterで楽観的な意見を述べています。
仮にテザー疑惑がクロでUSDTの信用が損なわれても、その場合にUSDTホルダーは現金へ退避するのではなく、別の仮想通貨(例えばBTC)に退避するだろう。となるとむしろBTC価格は上がるよね、といった感じの意見ですね。
また、ライトコインの創始者であるチャーリー・リー氏もtwitterで楽観的な感じ。
12月時点でCFTC(米国商品先物取引委員会)から召喚状を送付されており、それ以降もテザーが発行され続けているという事実は、グッドニュース(後ろめたいことはなく、大丈夫ということ)だろう。といった意見。
他にも、「今の仮想通貨市場が40〜50兆円規模なのに対して、テザーは言っても総額2500億円。仮にクロでも市場を崩壊させるほどのインパクトはないだろう」といった見方もあります。
確かに私の意見としても、最近の立て続けのネガティブ報道は

ほりっく
と思えてなりません。
正直テザー疑惑なんて今に始まったわけじゃないですしね。この下落トレンドに合わせて何者かが売り煽っているように勘ぐってしまいます(誰かがBTC価格を下げて買い漁ろうとしている?)。
結論まとめ

ほりっく
ということで、テザー疑惑がクロかシロかすら、はっきり答えが出るのはまだ先になるでしょう。テザーは結構ブラックボックスっぽいので結局うやむやで終了する可能性もありそうです。
ひとまず、今後悪い方に転ぶニュースが出たときには多少なりともBTCは下落すると思うので、その辺は最新情報にアンテナ張っとく必要ありです。
【追記】
韓国の取引所UPbitが、テザーのドル価値を保証すると発表したそうです。
こうした保証が多くの取引所で広がればテザー問題は無事に収束しそうですね。というか、そうなるよう願います。